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Medium Coeriへようこそ。お手数ですが初めてお越し下さった方は『始まりの挨拶』を一読し、納得なさってからご観覧下さい*このブログは同背後PCが共有で使っています。同背後バレが嫌な方は申し訳無いですがお引き取り下さい

「雲隠れの家」偽旅団シナリオ PRESENT HUNT

食べ物兎
無限の旅団「雲隠れの家」で、プレゼント交換シナリオ(偽)に参加した時の話だな。
(旅団所属キャラ、アルベド・ホロスコープ)

此れを書いてくれたのは、アイヴィ・ルウィン。
編集作業はバルア・シャルウィードがしていたな。
とても面白く読ませて貰った事、二人には感謝する。
PRESENT HUNT

  

  
●賢く隠匿
   
「――よし、できた!」
 小さなカードの上に走らせていたペンを横に置き、木漏れ日に舞う舞踏拳士・シャロンは満足げに微笑んだ。
 その笑顔はまさに、カードに記した自分の似顔絵とそっくりで。
「見つけた人が笑顔になってくれるといいな」
 もう一度にっこりと笑ったそのとき、部屋の外でぱたぱたっと誰かの足音が聞こえた。
 シャロンは慌てて手にした本にカードを挟むと、しゅるしゅるっと器用にリボンを掛けて取り上げる。
「これでよし。リウナさんの笑顔に負けないぐらい、元気いっぱい頑張るぞ!」
 意気揚々とプレゼントを隠しに出かけるシャロンは、まさしく言葉通りの笑顔をしていた。
   
   
「さてさてです」
 プレゼントを手にした団員たちが、心なしかすれ違う相手の視線を気にしながら慌しく行き来する一階廊下。
 腰に手を当ててふんぞりかえっているのは、桜守唄・チェリートである。
「かくれんぼには自信があるのですよ、隠すのもれっつ応用編でばっちりなのです!」
「わぁ、そうなのですか? どうしてお得意なのでしょう…?」
「なんで隠れるのがトクイかってそれは体のサイズがちいさ」
 すらすらと口をついて出た答えに自ら凹み、その場にくずおれるチェリート。
「ああっ、チェリートさん元気出してくださいー!」
 気のみ気の儘・ナナミが慌てて背中をさすりにかかると、
「そ、それはひとまずおいておいてですね!」
 チェリートはしゃきんと背筋を伸ばし、早くも立ち直った。
「…トクイといったものの。まだここの家の構造よくわからないのですよね…」
「そういえば私もです。まだ来て間もないですし」
 顎に手を当て、知っている場所に考えを巡らす彼女たちは、明らかに通行人の邪魔になっている…のだが、ゲームの前にそんなことは構ってはいられない。
「洗面所付近はこないだコードネームGが出たので却下。空き部屋はこないだブラッドさんが行き倒れてたから却下」
「! そうなんですか!」
 またもや出所の解らない団長情報。しかし素直に感心するナナミ。
「厨房は…はっ、そんな高いところに隠すだなんてアイヴィさん、ちょっといやかなり背が高いからって羨まし…いえ、悪辣な…!!」
「え? アイヴィさん? …どこですか?」
 きょろきょろと周囲を見回すナナミ。――答えは『チェリートの頭の中』です。
 どうやら先程の居間での一件、チェリートのコンプレックスを激しく刺激したらしい。 
    
 逞しすぎる想像力で、遠い世界へ旅立つ一歩手前。そんなチェリートが隠し場所を決めるには、まだ時間がかかりそうだ。 ナナミは苦笑しつつ、さて、私はどこに隠しましょうか、と思いを馳せた。
   
   
 ――時を同じくしてほぼ真上の二階廊下、ふんふんと楽しげに鼻歌を歌いスキップするヒトノソが一匹。
「たっからさがしー♪」
 弾む足取りと歌がとある部屋の前でぴたり、と止まる。次の瞬間、純白の癒姫・キティは忍びも真っ青なすばやさでその部屋の中へと入り込む。
 キティの腕の中で、子猫のティアラがにぁー? と不思議そうに鳴く。キティはしー、と人差し指を立て、ティアラからゆっくりと視線を持ち上げた。
 天井に明りとりのガラスが嵌めこんであるほかは窓がない。四面を大きな壁で囲われた部屋。
 団員たちの数多くの肖像や雄姿を飾る、画廊部屋だ。
「普通に隠して、普通に見つけられるのは皆がしてると思うから、キティはあえて違う事をしてみるのなぁ~ん! えっへんっ」
 キティの視線はさまざまな絵の上を彷徨っていく。てのひらより小さな額縁に収まったアイコン、こちらを見つめていると錯覚しそうなBU。その中に恋人のものを見つけて何となく安心しつつ、
「…やっぱり『これ』なぁ~んね」
 それ自体が光を放出しているかのように、ひときわ異彩を放つ大きな絵。
 目を留めたキティはにやりと笑み、ポケットからかさり、と何かを取り出した。
   
    
 一方。
 居間から一望できる、大きな庭。春には色とりどりの花々で、夏には青々とした緑で飾られるこの庭も、この時期は少し落ち着いた風情だ。寒椿の花が、きりきりと染み渡る寒さを跳ね除けるようにちらほらと咲いている。
 そんな庭の片隅で、三枚目の小悪党・ゼットがひとり、奇妙な行動を取っていた。
 建物に張り付くようにして、窓からの視界に入ることを拒みつつじりじりと進む。その動きは明らかに不審である。――が、目論見通り誰かに見つかることはなかった。
 目指すは背の高い落葉樹が並ぶ裏手。ゼットは素早く家の陰に回り込み、僅かに雪を被った落ち葉をがさがさとかき集めた。
「…よしっと、こんなもんでいいか。少し変に見えるかもしれねぇけど」
 立ち上がり、満足げに手をぱんぱんと打ち払う。
「なんたってこんなクソ寒いのに誰も外になどでねぇだろ」
 にやり、とほくそ笑み、家の中へと戻るゼットの足取りは軽い。
 ――数分後、思惑に反して庭を探索する者がぞろぞろ出て来ることなど、知る由もなく。
   
   



●地道に探索
  
 ――蒼磬ノ謳・セトナは悩んでいた。
 どうやら誰かのプレゼントらしきものを見つけた。――というか、プレゼントの方が自ら視界に入ってきたと言うべきか。
 プレゼントの隠し場所に悩み、ふと居間に入ってぐるりと周囲を見渡したとき、彼女は強烈な違和感に襲われた。
 部屋中央の大きな白木のテーブルの上、緑色の包装紙に赤いリボンのかかったいかにもそれらしい箱が、『ここです』と言わんばかりに鎮座ましましていたわけである。
「…ええと…」
 誰かが隠し場所を見つけるまでの間、ここに置いておいたのだろうか。
 あるいは夜のパーティの余興に使う何かとか?
 もしかしたらプレゼント交換とは関係なく、誰かが誰かに用意しておいた贈り物…?
「…と、とりあえず隠し場所っ」
 ひとまずあれから意識を逸らそう。そう決意して、セトナは隠し場所を求めて部屋をぐるぐる動き回る。
 出窓のカーテンの裏側、造りつけの本棚の上、ソファーの陰に茶器やケーキ皿などをしまう棚の奥。たくさんの人が出入りしくつろぐ居間には、それだけモノを隠すのに適した場所も多い。
 ――しかしつい気になって、巡った視線をちらりと戻してしまうのはやはりテーブルの上。
「………うっ」
 ますますもって『ここですってば』と訴えかけてくる箱。
 …セトナは悩んでいた。
   
   
「…くしゅっ」
 ――そしてその悩みの原因たるこの男、団長のブラッドはその頃、悠々と廊下を歩いていた。
 何もしていないわけではない。出窓に寄り何もないことを確かめたり、置かれた観葉植物の鉢の陰に視線をやったり、探してはいる。さりげなく。
「…やはりここにはないか」
 そこそこの広さがあるこの家、廊下と一口に言ってもあまりに漠然としすぎている。だからこそ探さなそうだと思ったわけだが、
「あっ、団長も廊下? 二階はボクが見てきたけどなかったよー」
「…そうか。こっちもなさそうだ」
手を振りながら――ついでに来る途中にあった別の観葉植物の陰をちらりと覗き込んで――駆けてきたシャロンの言う通り、残念ながら廊下に隠した者は居ないようだ。
 小さく吐息を漏らし、ふと背後に気配を感じて振り返る。――と、
「…ないなあ」
 さっきブラッドが確かめた出窓を覗き込んで、溜息。その先にある観葉植物の鉢を覗き込んで、溜息。「パニエも苦戦しているみたいだな」
 ようやく二人の存在に気づいた表裏縹色・パニエは、へへー、と照れ笑いを浮かべた。
「なかなかみんな隠すの上手ですよねー、でも頑張って見つけるですよー!」
 ガッツポーズを作り、それじゃっ、と二人の傍らを通り抜けたパニエは、
「………」
「………」
二人が見守る中、今さっきシャロンが確認した鉢の陰を覗き込み、
「…うーん。やっぱりないなあ」
またしても溜息を漏らしていた。
   
   
「うーん…フォーナの飾りつけがまだ終わってないんですよね」
 気がかりを抱えつつ探索に向かったリウナは、不意にぽん、と掌を叩いた。
「そうだ!! こうして探して行けば、お得なのです♪」
 急いで引き返し、飾りをずるずる引きずって戻ってくるリウナ。
「探しながら装飾をしていけば良いのです!! 一石二鳥なのです♪」
 そう言いつつ彼女が向かったのは――何故か、空き部屋。
 誰も使っておらず、物置同然になっていることはリウナも承知の筈なのだが…
「入りますよー!!」
几帳面かつ元気いっぱいに挨拶をして、扉を開ける。中は当然の如く、箱や山積みになった本、使っていない家具などが殺風景に並んでいた。
「暗いですね、灯りをつけましょう!!」
 手にしたカンテラに火を灯し、手際よく荷物を整理していくリウナ。
 本の塔は隅へ寄せ、大きな緑色の布を被せて輪飾りをかければツリーに早変わり。
 箱は大きさを揃えて並べ、これもまた上にクロスをかけてテーブルのように。
 あっというまに見違えるような明るい部屋に大変身である。
「完成なのですー!!」
 真冬の向日葵のような笑顔を浮かべたリウナはその後、部屋の隅でさらなる笑顔を手に入れるのだった。
   
   
「うふふ、どんなものが見つかるのか楽しみだよ。…おや?」
 直感であまり立ち入らない屋根裏を選んだ清麗なる空牙の娘・オリエは、梯子の上、せっせと荷物を動かしている先客に気がついた。
「メイ。お邪魔していいかな」
「あ、オリエさん! もちろんどうぞ…けほっけほっ」
 せき込む風の楽師・メイの背を、慌てて梯子を上りさすってやる。
 屋根裏部屋は、天井が屋根の形そのままに斜めになっている、まるで物語から抜け出たような部屋だった。綺麗に片付けたら、こんな部屋に住むのも悪くはなさそうと思わせるような。
「メイも屋根裏が怪しいと思ったんだね」
「はい、屋根裏は秘密の場所です♪ でも、すごい埃です…」
 確かに、上ってきた自分たちの足跡がくっきり残るほど埃が積もっている。
 ――おや、とオリエは首を傾げた。
 メイの足跡が二組、自分の足跡が一組。もうひとつ、隅の方に目立たないように避けて通った足跡がある。
「だから先に掃除もしてしまおうと思いまして」
 メイが示したのは、箒に塵取り、バケツに雑巾。小柄な体で運び込んだらしい掃除用具の数々に、目を丸くするオリエ。
「そうだね…、じゃあ私も手伝うよ。今は簡単に、後でブラッドに言って大掃除をさせてもらおう」
 プレゼントが全部見つけられてしまうと困るからね、と片目を瞑ると、メイははい、と笑顔で答えた。
   
   
「くっ、これは私に対する挑戦ですねっ」
 画廊部屋では、小さなカードを手にチェリートがふるふると震えていた。
 端から順に一枚一枚ひっくり返しながら――小柄なチェリートにはたいそう骨の折れる仕事だったわけだが――見ていった絵の裏に、ぺったりと張り付いていたカード。
 そこには青いインクで、こう記されている。
『光と闇が出会う場所 見上げてみれば、銀星ひとつ』
「これは明らかにヒントなのです…! カシス、一緒に考えるのですよー!」
 張り切るチェリートに、猫のカシスは首を傾げた。
「光と闇が出会う…光と闇…ここの家に暗いとこってありますー…?」
 夜中にでもならない限り、こうこうと暖かな光が絶えない、そんなイメージがこの家にはある。 
「うーんうーんうーん」
 悩むチェリートの腕から抜け出して、カシスはすとんと床に下りる。
 にぁーん、と天井を見上げて一鳴き。
「…? 上…、上…? ………はっ」
 賢い愛猫に助けられ、チェリートはきらり、と瞳を輝かせた。
 頭上には窓。――柔らかな夕暮れの光から、深い闇へと移り行く空。
「答えは『お外』ですねっ、お庭にれっつごーです!!」
   
   
「…それにしても不思議です」
 厨房へ戻ってきたリアスがひとりごちる。
 先刻『空き部屋』と思って入った部屋には、何故か華やかかつ入念な飾りつけがなされていた。
 必要だったのでしょうか、と小首を傾げつつ、これだけ人の手が入っていれば残されたプレゼントはもうなさそうだと判断し、ここ――厨房へと戻ってきた。
 磨きぬかれた食器や調理道具は、普段彼を含む団員が手入れを欠かさない証拠。料理屋ほど広々したものではないけれど、『厨房』と呼ばれるだけの格は感じる。
 リアスは勝手知ったるこの厨房を自らの隠し場所に選び、そして第3の探索場所に選んだ。
「さて…自分が隠した以外の場所ですね…ま、ゆっくり探してみましょう」
 調理台の上には運ばれるのを待つばかりの大きなケーキやオードブルの類が並んでいて、あまり大掛かりな隠し方はできそうもない。つまり誰かがここを隠し場所に選んだとすれば、案外隠し方は単純なはずだ。
 そしてリアスには、この場所のモノの配置はおよそ頭に入っているという強みがある。
 なぞるようにゆっくり淡々と視線を動かしていくと、おや、と思う。自分が食器の上に置いておいたプレゼントがなくなっている。
「…先を越されたみたいですね」
 既にここは誰かが探索済みらしい。しかし念の為、ひととおり確認して変化がないことを確かめる。
 賢明な彼が目的のものを見つけるのには、そう時間はかからなそうだ。
   
   
 ――そんなリアスとは対照的に。
「…ないなあ」
 家を一巡りしたものの、プレゼントどころかまだ手がかりひとつ見つけられず、肩を落としていたのはパニエである。
 ちらりと窓の外に目を走らせると、雪を被った寒椿が目に入る。綺麗だけれど、
「うーん…外…はあんまり出たくないなあ」
思わず自分のことのようにぶるっと身を震わせる。雪はキライじゃないけれど。
「…パニエ。見つかったか?」
 振り向くとそこには団長の姿。ちらりと視線を手元に向けると、彼の手もまだ空いている。
「ブラッドさんっ。私はまだー…ブラッドさんも?」
「ああ。…家の中は一巡りしたからな、これから外に出てみようと思うんだが」
「はう…やっぱり外かぁ」
 寒いのイヤだなぁ、とめそりとしつつブラッドの後に従う形でついていこうとして、――途中、あっ、と足を止めた。
「ねえブラッドさんっ、洗面所って探した?」
「…そういえばまだ見ていないな」
 通りすがった洗面所の入り口を、両側から覗き込む。
 合わせ鏡のように向かい合わせに数枚の鏡が並び、それぞれに洗面台が備えつけられている。その奥の小さな扉の向こうが脱衣所になっていて、さらに奥の扉の先が風呂場、という構造だ。
 歯ブラシを立てたコップが数個ずつ、自己主張するように鏡の前に並んでいる。面白いことに、数はあるものの、いつも顔を洗う場所は団員それぞれ大体決まっているようだ。
「…きょ、今日は出ないよねっ、大丈夫だよね…お願い出ないでっ」
 ――いつぞや掃除中に巨大なコードネームGに遭遇したパニエ、密かにトラウマになっている。ぱちん、と両手を合わせ、中に入り込む。
「…寒くなったし大丈夫だろ」
 生真面目なブラッドの答えに縋る思いで、台の下の棚を開ける…と、
「…、あった! あったよブラッドさんっ、きゃーやったー!!」
 ――いきなり大当たり。解り易くどん、とリボンのかかった箱が置かれていた。
 抱きしめてはしゃぐパニエに、ブラッドは目元を緩めて良かったな、と返す。
「…あれ、でもなんだろ…ずいぶん軽いみたい」
 箱の大きさの割に、中にモノが入っている気配が希薄である。振ってみると、微かにかさかさ、と音がした。
「…開けてみたらどうだ?」
 ブラッドの提案に頷きつつ、少し不安げな顔でリボンを解くパニエ。ぱこっと蓋を外し覗き込んでみると――そこには見慣れた可愛らしい文字で、
『【画廊部屋】の神々しいブラッド様全身図の後ろを見よ!』
「こ、これってもしかしてヒント!? この字ってキティだよね、あははっ、おもしろいっ!」
 見つかったのはプレゼントではなく、その糸口だったらしい。けれどもその仕掛けは、パニエをさらに喜ばせた。
 一方その傍らで、
「………キティ」
 美形であるのに賛辞になかなか慣れない団長は、もはや団長名物となりつつある『orz』をここでも遺憾なく発揮していた。
   
   



●いろいろ発見
   
「……む~…無いなぁ……」
 大きな体を小さく屈めて、会議室の机や椅子の下を丁寧に覗いて回っているのは、死ぬまで不死身・ランブルだ。
 数十人で囲めそうなサイズの円卓に、相応の数の椅子が備え付けられ、壁のひとつは全て本棚になっている。この部屋も探し甲斐はありそうだ。
「……こっちも…無い…痛っ!!」
 がつん! と強かに頭をぶつけ、涙目で机の下から這い出てきたとき、ふと目が合って驚いた。
「…おまえは…確か…バルアの飼ってる…サイファだな…。そっちのは…友達か…?」
 仮眠用のソファーの上で、二匹の子猫がランブルを見返している。一匹は見たことのない茶トラだった。
「…ん?」
 よく目をこらして見ると、二匹のさらに奥に、大きな猫が丸くなっている。
「まだ…いたのか…。猫玉…かわいいな…」
 体は大きいが気は優しいランブルは、そっと手を伸ばして猫たちを撫でてやる…のだが。
 後ろの猫を撫でた瞬間、猫の体がぺしゃりと潰れてしまったではないか!
「…!」
 驚いて声も出ないランブルの前で、子猫たちは構わず、後ろの猫にじゃれついている。
 その様子を見るうちに、ランブルはようやく気がついた。
 猫のように見えたのは、服だ。丸めてそれらしく形を整えてある、猫の耳と尻尾のついたコート。
 子猫たちと一緒に持ち上げてみると、ぽとりと何かが落ちた。拾い上げると、温もりがまだ残るカイロである。
「そうか…それで…猫が集まっていたんだな…」
 微笑むと、ランブルは子猫二匹を肩に乗せ、コートを取り上げた。
「誰のか知らないが…みんなに聞いて…届けてやろう…」
 ――それがプレゼントであることには、いまだ思い至っていない。
  
  
「あ、あったあった。ありました~」
 光秘めし天青石・セレスは見事、最初に訪れた画廊部屋でプレゼントを手にしていた。
 画廊部屋の絵は壁に固定してあるものだけではない。造りつけの棚に立てかけた何点かの中に、少し位置がずれているものが一枚、あった。
 元は執事という彼の性質上、ずれを正そうと思わず近寄ったその時、絵の裏に隠されたものに気がついたのだった。
「案外簡単に見つかりましたねー、さて…これからどうしましょうか。誰かのお手伝いでも…」
 言いながらふと自分の手に目をやって、彼ははっと息を呑んだ。
 ――白手袋の指先にうっすらついた、灰色の埃。
「わ…ここもよく見ると結構汚れてますねぇ」
 絵は一度飾れば動かすこともそうそうない。よくよく見てみれば、周囲の絵の額縁にもうっすら誇りを被っているものがある。
「うーん…これは盲点でしたか」
 とりあえず手近なものの埃だけでも払おうと手を伸ばした…途端、前触れもなく、彼の正面にかかっていた絵ががたんっ! と落ちた。
 ――セレスの足の上に。
「っ!!?」
 声にならない痛みに思わずしゃがみ込むセレス。
 どうやら固定してあったフックが緩んでいたようだ。――犯人はおそらく、すさまじい勢いで絵をひっくり返して回っていた某プリン少女と思われる。
「…な、何でこうなるんです~」
 足先を押さえつつ、微妙に不運な気がしなくもないセレスだった。
 とあれ、画廊部屋も歳末大掃除リストに加わったのは言うまでもない。
  
   
「…なんだこれ」
 アイヴィと白き闇呼ぶ歌姫巫女・アルベドは思わずぽかんと口を開けた。
 訓練部屋の壁には、刃を潰した練習用の武器の類が飾られている。
 ――…飾られている、のだが。
「…見事にバラバラだな」
 アルベドの言うように、剣なら剣、槍なら槍、ときちんと配置されていた筈のそれが、種類は言うまでもなく長さ、重さ、全てにおいて滅茶苦茶になっている。
「…なんつーかこー、慌てて隠しに来て服でも引っ掛けてバラまきましたー、でさらに慌てて直して立ち去りましたー…って言ってるよな、コレ」
 コン、と壁を楽しげに叩きながら、アイヴィは笑う。――つまりはここに、目的のモノが在る。
「…そうだな。探すか」
 アイヴィを牽制するようにそそくさと捜索に移るアルベド。無表情を装ってはいるが、彼女もまたこのゲームを楽しんでいるらしい…ことは、楽しげに揺れている尻尾で解る。
「…んじゃオレはこっち探…あ、あった」
「!?」
 無造作に並んだ訓練用の盾のひとつをふと手にとった、その裏側にあっさりと、貼り付けてあるプレゼントの袋を発見するアイヴィ。強運は伊達ではない。
「…! くっそぉ!! ぜってぇ負けねぇなぁーん!!」
「…アルベド、戻ってる戻ってる」
 言葉、というツッコミすら、メラメラと闘志に燃え立つアルベドの耳にはもう入らない。
(…まぁ、コレ隠したヤツと武器バラまいたヤツは別だろーし)
 盾からぺりっと包みを剥がし、ぱたぱたと仰ぎながら、アイヴィはアルベドの動きを楽しげに観察する。
 この盾は、アイヴィの目線の高さに飾られていた。近くに踏み台も脚立も見当たらない以上、隠した人間は長身、ということになる。
 ――この家の住人で、背が高く、かつ飾られた武器をバラまく、という極めて可愛らしいドジをやらかしそうな人間に、アイヴィは全く心当たりがなかった。
 リウナかチェリートか…あ、キティとか? と好き勝手推理する彼をよそに、アルベドはあるものに目を止めた。
「…」
 部屋の隅に置かれた、武道家が拳を鍛えるために使うサンドバッグ。
 のそのそと近づくと、近くに飾ってあった真剣をおもむろに手にし――
 …ざっくり。
「…うわ」
 さすがのアイヴィも呆気に取られる。袋の切れ目からざざー、と景気良く零れ落ちる砂を前に、やっぱりないか、と呟いたアルベドは、振り返って言い訳のようにこう言った。
「いや、子ヤギが居るかと思ってな…?」
「イヤ、何探してんだよオマエ」
 ――とりあえず後日、訓練部屋探索組が掃除を言い付かるのはほぼ確定だろう。
  
   
「…ね、お願いだからじっとしてて…ね?」
 『神々しいブラッド様全身図』の裏で発見した『ちびヒメを探し、リボンに挟まってる紙をゲットせよ』という指令に従い、真っ白な子猫を追いかけてやむなく外に出たパニエを背景に。
 外にはブラッドをはじめ、数名の団員の姿があった。
「…セトナさん? 風邪をひかれますよ…?」
 恐る恐る至天煌星・セロが声をかけたとき、セトナは庭に設置されたベンチに座ったままうたた寝していた。傍らには、どうやら決意を固めて持ってきたらしい大きなプレゼントの箱がある。
「…うーん…、…あれ、セロちゃん…おはようだよ」
 寝ぼけていつもと口調が変わっているセトナを微笑ましく思いつつ、セロは自分の羽織ってきたショールを肩にかけてやった。
「寒くありませんか?」
「大丈夫だよ~、ありがと♪ そうだ、はいどうぞ~♪」
「え」
 手渡されたのは、どうやらプレゼントと思しき箱。
「見つけてくれたから~ボクからセロちゃんにプレゼント♪」
 セロが見つけたのはプレゼントというよりも寧ろセトナ自身だったのだが。
 セロは一瞬目を見開き、ありがとうございます、とにっこり微笑む。
 一方、ブラッドにオリエ、そして清らなる六花・ユキノの三人は、ゆったりと庭を散策していた。
「プレゼントはもう見つけたのだけれどね。屋根裏部屋の窓から見えた庭がとてもいい感じだったから」
「よく気がついて世話をしてくれる団員が少なくないからな」
 ブラッドの言葉を裏付けるように、ユキノがつっと脇の花壇に寄った。微かに積もった雪の隙間から、寒さに震えることもなく雑草が顔を出している。それをさりげない動作でユキノは摘んだ。
「寒椿が見事だよね。春はまた趣が違うのかな」
「私もまだ暖かい時期のお庭を見ていないです…でも、きっと素敵でしょうね」
 微笑みを浮かべる二人に答えを返そうとした瞬間――ブラッドはがくり、と何かに足元を取られた。
「!?」
「ブラッド!」
 慌てて助け起こそうとする二人に、大丈夫だ、と足元を見つめる。
「…こんなところに穴が…」
 口元に手を当てるユキノ。人の頭ほどもあるそれは、一応埋めようとした形跡はあるものの、慌てたのか何なのか、しっかりと固めるには土が足りなかったようだ。
「…埋めておかないとまた誰かが嵌るな…、ん?」
 立ち上がりかけたブラッドの気を引くものがある。
「…何か、甘い匂いがしないか?」
「甘い匂い? …お花ではなくて、ですか…?」
「いや…、もっとこう…ここでするはずのない匂いというかな。強いて言えば」
 これはカラメルとバニラのような気がするんだが。
 そう続けるまでもなく、尻餅をついたままのブラッドはその匂いの正体に気づいた。
 視線の先――寒椿の根元に、葉の模様で彩られた箱が、ひとつ。
「あ…こちらにも」
 何気なくユキノが彷徨わせた反対側の垣の下に、この時期普通には咲くはずのないバラの花が、愛らしくひと塊こんもりと咲き誇っていた。その下の包みを隠すように。
  
  


 
●お待ちかね
  
「ええっ! うそ、もう見つかっちゃった?」
 居間でくつろいでいるリアスの手に、自分のトレードマークである朝顔の造花が飾られた包みがあるのを見るや、パニエは本気で驚く様子を見せた。
「ちなみにどこに隠したんですか?」
 興味津々に訊ねるメイに、リアスはにこにこと、パニエは情けなさげに、黙って居間の片隅にあるコタツを指差した。
「そりゃ見つかるぜ」
 ゼットが愉快そうな笑いを漏らす後ろから、ぞろぞろとプレゼントを抱えた団員たちが居間へとやってくる。
「…16、17、18っと。全員揃ったみてェだな。んじゃ順番に開封する?」
 アイヴィがぐるりと見渡す。どうやら皆そのつもりだったらしく、包みを開けてみたらしい者はいないようだ。
  
  
「やっぱ最初は団長だろ」
「…ん、俺か。…俺はこれだ」
 促されたブラッドが箱を見せると、
「あ、それわたしのですねっ」
はいっ、とすかさず挙手したのはチェリートだ。そうだろうと思った、と苦笑するブラッド。
「俺の予想が正しければ、おそらくこれは」
 そう言いながら蓋を外すと、中から姿を現したのは――
「自分の欲望に忠実なプリンセットです♪」
 チェリートの説明に周囲が沸く。【銘菓】プリンどら、勇者のプリン、ご褒美プリンの豪華三点セット。甘い香りがするはずだ。
「しあわせはココロに美味しいってことなのです!」
 そう締めくくったチェリートに、ブラッドは遠慮なく頂こう、ありがとう――と穏やかに礼を述べた。
  
  
「…チェリートは何を見つけたんだ?」
「よくぞ聞いてくれたのですよー!」
 えへん、と胸を張りつつ指し示したのは、銀色の袋に金色のリボンのきらきら輝くプレゼント。
「わたしとカシスにかかればこのくらいの謎は朝飯どころか間食前なのです」
 ヒントのカードをもとに展開した推理を語った上で、チェリートは庭の背の高い木の枝にひっかかっているのを見つけた、と説明した。
「見上げたらほんとにきらっと光ったですよー。カシスに落としてもらったのです、何せわたしは背がちいさ」
 再び落ち込むチェリートを周囲が慌てて宥める。
「そ、それはそうとチェリートさん、プレゼント開けません!?」
 ナナミの機転で立ち直ったチェリートがリボンを解くと、小さなランタンが現れる。
「【秘星のランタン】ですよ~。実用性もありますし、ちょっと素敵な仕掛けつきです」
 使ってみてくださいね、と笑うセレス。どうやら贈り主は彼のようだ。
  
  
「私はこれです」
 セレスが示した包みに、おずおずと手を上げたのはユキノ。意外と大きな包みからは、だきゅぐるみ『ノソりん・フワりん・ムシャりん』の三点セットが出てくる。
「豪華ですねぇ…有難うございました、大事に使わせていただきますね~」
 セレスの微笑みにユキノはほっと胸を撫で下ろした。女性はともかく、男性がぬいぐるみを喜んでくれるか少し不安だったのだ。
「私はお庭で…花束と、こちらは本…でしょうか?」
 ごそごそと包みを開けてみるユキノ。中から出てきた本のタイトルはなんと、『恋愛マニュアル(完全版)』。
「やはりこの時期にぴったりの贈り物といえばこれしかないでしょう♪」
 頬を染め浮き浮きと答えたのはメイ。真っ赤になるユキノを励ますように皆が笑う。
  
   
「え、私ですか? それなんですけど…私、女性から告白されてしまいましたっ」
 ざわっと湧く団員たち。メイが見せたカードには、『一目見た時から好きでした……vv』のメッセージ。
「庭で落ち葉に埋めてあったのを見つけたんですけど」
「…それ、ちょっと変じゃないかなぁ」
 首を傾げたのはシャロンだ。
「だってメイさんが見つけてくれるかどうか、わかんないよね? これはもしかして…あれ、ゼット先輩ドコ行くのかな~?」
 こそこそと場を離れようとする怪しい男に、すかさずアイヴィがヘッドロックをかける。笑顔で。
「いだだだだだっ!?」
「正直に吐いた方が身のためだぜー? 覗きの一件もあることだしな♪」
「わ、悪かったって…く、苦し…」
 ゼットが落ちるのは時間の問題と思われる。メイは気にした様子もなく、
「中身はお酒みたいですね! 美味しく頂きます♪」
エール酒「レッドブル」と黒ビール「辮髪」を両手に笑った。
  
   
「ってぇー、手加減しろよなー…っと、俺はこいつだ。厨房で見つけたんだけどな」
 首を押えつつ、解放されたゼットがごそごそと包みを開けてみると――
「…『葡萄タルトのレシピ』に『ズッキーニのレシピ集』…」
 思わず目が点になるゼット。
 添えられたメッセージには、
『このレシピを見つけた貴方に、さらに素敵なプレゼント! みんなの笑顔を見てみませんか? ってことで、お料理楽しみにしてるね!』
 描き添えた似顔絵にそっくりな『いい笑顔』で、シャロンが笑う。
「あはは、ゼット先輩に当たっちゃったかー。美味しく作ってね!」
 くすくす広がる忍び笑いに、ゼットはたまらず叫んだ。
「そこ、笑うんじゃねぇー!」
  
   
「ボクも厨房で見つけたよ!」
 シャロンが包みを開いてみると――出てきたのは何と『アルテミシア☆ブラックメイド服』。
「あ、女性に当たったみたいですね。良かったです」
 素直にほっと胸を撫で下ろしたのは、意外にもリアスだった。ざわっと湧く周囲。
「フリフリで可愛いのなぁ~ん。でもリアス様、どうしてこれにしたのなぁ~ん?」
 首を傾げるキティに、極めて爽やかにリアスは苦笑した。
「ええと、以前一寸、縁で貰いまして…私は使わないので、今回のプレゼントにして見ました」
「そうなのなぁ~んね。きっとシャロン様にも似合うと思うのなぁ~ん♪」
「へへ、そうかな? ありがとね、リアスさん!」
 フリフリのメイド服を体に当てて、シャロンは照れくさそうに笑った。
  
  
「僕はパニエさんのでしたね」
 ごそごそと包みを開くリアスの後ろ、パニエはえへへー、と期待に顔を紅潮させる。
「じゃじゃーん☆ 私からのプレゼントは、手編みの腹巻~~♪」
 おぉっと歓声が上がる。冬にはなかなか重用する一品だ。
「……や、うん、ほんとはセーター編みたかったんだけどね」
 何がどうなって腹巻になったのかは聞かないでおくのが人情というものだろう。
「え?」
「う、ううん何もー!」
 慌てて両手を振って誤魔化すパニエに、リアスは穏やかに笑いかける。
「ありがとうございます、大事にしますね」
「手編み、なぁ。…カノジョに妬かれねェよーになー」
 笑いながら茶々を入れるアイヴィに、
「はわっ…か、考えてなかったっ!」
赤くなったり青くなったりしながらあたふたしたのは贈り手の方。
 リアスは苦笑しながら大丈夫ですよ、とパニエを宥めるのだった。
  
  
 そのパニエの手にある一抱えほどの包みを手にして、あっ、と声を上げたのはキティ。
「パニィ、よくぞ見つけてくれたのなぁ~ん!!」
 なかなかプレゼントに辿りつけなかったパニエだが、親友のプレゼントを引き当てるあたり残りもの運は良いのかもしれない。
「きゃーキティ~♪ すっごく面白かったっ」
 ちょっと寒かったけど、と付け足すパニエはセーターに外套にマフラーに手袋、とまだ完全防寒の名残を纏っている。
 苦戦しつつやっとで捕まえた子猫は『庭の草むらの中』と記された紙を括りつけられていた。たらい回しの末、最後に辿りついた草むらで無事プレゼントをゲットしたわけだ。
「えーと、中身は…わっ、かわいいっ」
 『ノソぐま』のぬいぐるみ。そこそこの大きさもあって、抱き枕にも良さそうだ。
「大事にしてくれたら嬉しいのなぁ~ん」
 にっこり笑ったキティに、パニエは満面の笑みで頷いてみせた。
  
  
「キティは…ややっ、キティもぬいぐるみなぁんね!」
 ごそごそと袋を開けてみると、――何とも言えない顔のぬいぐるみが出てくる。
「かわいいのなぁ~ん!」
 目を輝かせて頬ずりするキティ。周囲(特に男)には、そうかあれは可愛いのか…と納得する者あり、首を傾げる者あり。
「色々とお店をめぐって見つけてきました、顔がツボだったもので…」
 にこにこと挙手するのはナナミ。趣味を解してくれる相手に当たったとあって満足げだ。
 キティが居間のソファーの下で見つけたと話すと、
「はじめは庭に隠すつもりで穴を掘ったんですけど」
にこにことそんな話を始める。ブラッドの表情が僅かに変化をきたしたことには気づいていない。
「土の中ではぬいぐるみが汚れてしまうことに気がついて、とりやめたんですよね」
「…なるほどね、あの『落とし穴』はナナミの仕業だったんだ」
 くすくすと笑い零すオリエと再び『orz』するブラッドを前に、事情を解したナナミはきゃあ、ごめんなさい、とひた謝ったのだった。笑いが周囲に広がる。
  
  
「わ、私は厨房でこちらを見つけましたっ」
 少し顔を赤くしながらナナミが見せたのは、装丁にシンプルにリボンをかけただけの一冊の本。
「よく見つけたね。料理の本に紛れさせたから、なかなか見つけられないかと思ったのだけど」
 笑ったのはオリエ。ナナミはなかなか苦戦しました、と舌を出す。
「詩集? …オリエは本が好きなんですね」
 どうやら寝起きテンションからは脱したらしく、いつもの口調に戻ったセトナの問いに、
「うん。――きっと自分の探してる心に響く言葉がみつかる…はず」
 オリエの言葉に、ナナミはありがとうございます、と微笑む。
「そして偶然だけれど、私も本を見つけたよ。…本だと思う、かな」
「あ…はい、本です」
 本が好きと聞き少しほっとした様子で手を挙げたのは、セロ。
 オリエが包みを解くと、三冊の本が出てくる。どれどれ、と覗き込んだ団員たちの目が点になった。
「…ずいぶん…趣が違う…本だな…」
 【礼法指南書】と絵本『水夢』と【ワイルドファイア大怪獣図鑑】がひとくくりになっていれば、ランブルでなくともそう言うだろう。
 当のセロはきょとんとして、生真面目に説明する。
「絵本は気持ちが和むので元々好きなんです。…残りの二冊は、ワイルドファイアと楓華の風土や文化に少し興味があって手に入れたんですが、やはり面白かったので」
 お勧めします、と微笑むセロに、らしいなーと団員たちも笑う。オリエはありがとう、と目を細めた。
  
  
「私はセトナさんから頂きました」
 プレゼント発見の経緯をセロが話すと、
「風邪ひいちゃうよ、セトナさん!」
本気で心配するシャロンにセトナははい、と苦笑しながら頷いた。
 そうして開けた包みの中身に、周囲もセロも目を丸くし、そして視線はすぐセロの肩の上に集まる。
 にぁーと鳴いたセロの愛猫サリタは、不思議なほど、
「そっくり…」
――そう、出てきた黒猫のぬいぐるみに似ていた。
「…並べると可愛いですね…、嬉しいです…。大事にしますね、セトナさん」
 セロは抱き下ろした子猫とぬいぐるみに軽く頬を寄せた。
  
  
「私は…これなんですが、…大丈夫ですか? 間違いじゃありませんよね…?」
 セトナがおずおずと横に置いていた箱を持ち上げる。紛れもなく『プレゼント』という感じの箱で、疑いようがない。皆が問うと、
「これ…居間のテーブルの真ん中に堂々と置いてあったんですが」
「そうだな。はっきり言って隠してないな」
 あっさりと頷いたのはブラッドで、
「…オマエかよ」
「あぁ、俺だ」
 苦笑いするアイヴィにも平然と落ち着き払っているあたりがらしいといえばらしい。
 胸を撫で下ろしつつセトナが箱の蓋を持ち上げると、中から出てきたのは…ノソ耳コート。
 絶妙のタイミングで女性団員たちの中から歓声が上がる。
「! ありがとうございます」
 頬を染めるセトナだったが――男性団員の一部は『何を思ってノソ耳コートにしたんだろう』という疑問を隠せなかったとか。
  
  
「ブラッドさんに始まってブラッドさんに戻ってきたですねー!! じゃあ次は私がお披露目します!!」
 まさに真冬の太陽のごとき明るさでリウナが仕切りなおす。
 取り出したのは、どこかから摘み取ってきたらしい蔦の蔓があしらわれた白い箱。 
「空き部屋のすみっこに置いてありました!! すぐわかったですよ、アイヴィさんですよね!!」
「ご名答ー」
 ぱちぱち、と手を叩くアイヴィ。
「ガキの頃によくこーいうので遊んだんだよな。面白ェかと思って」
 わくわくと箱を開けるリウナの前に現れたのは、手裏剣に水と混ぜると光を発する『蛍の粉』、イカサマセットにまきびし。――俄か【忍者セット】といったところ。
「わわっ、面白いです!! さっそく使って」
「いや待ってくれリウナ、室内で手裏剣は」
 慌てて止めにかかるブラッドとリウナのやりとりに、また笑い声が沸き起こった。
  
  
「んじゃ次はオレだな。訓練部屋の盾の裏」
 ぐるりと周囲を見渡すと、微かにランブルの視線が泳いだのを見て取る。
「なるほどねー、ランブルか。サンキュ」
 紙の袋に入ったそれは、どうやら何かの冊子のようで――抜き取ると、
「…ぶ」
 どうやらツボに入ったらしく、吹き出すアイヴィ。覗き込んだ周囲も意図せずして次々とそれに倣った。
 表紙に記されたタイトルは――『週刊「フルアーマーに萌え」』。
「重騎士は…いいぞう…」
 添えられたカードにも書かれた言葉を繰り返すランブル。
「あー面白ェ、オレマジメに転職考えよっかなー」
 ぱらぱらとページを捲って掲載された鎧の数々を眺めるアイヴィは、楽しげにそう呟いた。
  
  
「…それにしても…これが…プレゼントとは…思わなかったな…」
 ランブルは猫耳のついた見た目にも可愛らしいコートを、リザードマン特有の大きくごつごつした手先で器用につまんで広げた。
「よく似合ってるのなぁ~ん」
「ランブルさんってばかわいいっ♪」
 名物姉妹の褒め言葉に、
「なかなかいい男だぜな」
「またアイコンのネタが増えたじゃん、よかったなー」
 ゼットとアイヴィのこの台詞は、まず間違いなく面白がっているだろう。
「…まさかランブルに当たるとは思ってなかったが…確かに似合うな」
 頷く贈り主のアルベドに、セレスが首を傾げる。
「アルベドさんはどうしてまたあれを選んだんです?」
「…兄貴が送って来たんだが…デザイン的にも俺は絶対使わねぇしな」
 ――アルベドの為に贈られた猫耳コート。
 何故ランブルの身体にもぴったりと合ったのかはツッコミ不可。同盟の神秘、である。
  
  
「俺が最後か…リウナのプレゼントだな。…てことは、訓練部屋の武器がめちゃくちゃになってたのは…」
「はっ、ごめんなさい!! 後で直します!!」
「いや、それは別に構わねぇんだが…ケガしてないか?」
 良く見れば各所にアザなんかがあったりもするリウナを案じつつ、アルベドはサンドバッグを裂いたりしなくともきっと見つかった筈の小さな箱を、そっとあけてみる。
 途端、
「!!」
「わっ…」
「何ですか!?」
 箱の中から飛び出し、ひゅうっ――と家の中を駆け抜けていく一陣の風。
「…どうなってる…なぁ~ん」
 吃驚してつい語尾が戻ってしまうアルベド。その手に、こつん、と小さな何かが当たる。慌てて受け止めてみると、小さな小さな白銀の指輪だった。
「風を閉じ込めた箱と、お守りの指輪なのです!! びっくりしましたか?」
 リウナは乱れたアルベドの前髪を直しつつ、笑顔をお届けなのです~と笑った。
 ――アルベドがつられたように笑顔を零したのは、言うまでもない。
  
  
「――さて、日も落ちてきましたし…そろそろパーティーに移りましょうか」
 リアスが立ち上がったのを合図に、皆が腰を上げる。
 他の団員たちも次第に集まり出し、雲隠れの家は夜を迎える様相だ。
 運びこまれる大きなケーキの数々に上がる歓声。
 さまざまな色の飲み物がグラスに注がれ、仕上げられたご馳走がテーブルに並び、手を出して追いかけられる者あり、何から食べるか算段する者あり。
 けれども皆の顔には笑顔が咲き誇っている。
「みんな!! またやりましょうね!!」
 リウナのそれはゲームに対してだけでなく、このフォーナの一日を象徴するような響きを孕む。
 返事の代わりにかち合わせたグラスの高らかな音が、パーティーの始まりを告げた――。
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