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Medium Coeriへようこそ。お手数ですが初めてお越し下さった方は『始まりの挨拶』を一読し、納得なさってからご観覧下さい*このブログは同背後PCが共有で使っています。同背後バレが嫌な方は申し訳無いですがお引き取り下さい

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偽シナリオ夏の船舶旅行!~ウニへの復讐~【⑤ 夏祭り】

旅団「LAD*UNA」【無限】にて行われた偽旅団シナリオ【⑤ 夏祭り】です
シナリオの作者は、旅団の団員だった「アーザス・ファルク」さん


家からはラディクスで参加させて頂きました
シナリオが長いため全部で6つ程に分けて掲載しています。

シナリオ途中には参加者が描いた偽ピンナップも掲載されています。
ピンナップ製作者は「アーザス・ファルク」さん「ウミソダチノ・アヤノ」さん「解説ねこ」の3名。
掲載許可並び、素敵作品どうもありがとうございましたノシ

*なお、今回編集するにあたり、読みやすさ重視で上から読めるようエンディングから逆流れでUPしています。
*シナリオ本編は全部掲載すると重い(長い)ため追記にて掲載。

<夏祭り ~踊らにゃそんそん!~>


 月明かりの幸薄い夜空を橙色に染め抜く一条の光……いや、二条、三条……とにかく沢山の明かりが夜空を橙色に染め上げていた。
 まるで夜の世界に太陽の一欠けらを放り込んだかのような狭くも煌々と輝き続ける陽気な炎の灯り。
 そう、大提灯の光だ。
 提灯の腹には勿論豪快に『祭』の一文字が書かれている。
 そしてその気前のいい光を更に鼓舞するかのように調子の良い音楽が、旋律が、歌声が高らかに響き渡る。

「あぁぁぁ~~♪ 俺のぉぉぉぉぉ♪ 北極星ぃぃぃぃぃっっ♪」

 髪型をオールバックに決めたご老人が老人とは思えないスーパーヴォイスで歌っていた。振り付けも激しいぜ。
 ご町内の名物ジジイらしい。
 コブシの効きに効いたかなり独特な歌が耳ん中かっぽじって飛び込んでくるようだ。
 こう、腹のそこからグイグイ押し上げるかのように豪快な声の出し方。その歌と割烹着一枚のジジイは、何かと爺さん方に人気が有るようだ。
 芸名、アバレガタケ サンジュウロウ。
 ランドアース大陸に住んでいる面々には余り馴染みの無い歌だろう。もっとも、この歌い方はこの地方でも中々独特のものの様だったが。
 その歌に合わせて太鼓を叩く、若ぇ男の衆の腕前も中々のものだ。ねじり鉢巻が良く似合う。飛び散る汗も輝いて見える。
 何となく男の世界に見えるが、この煌々と光る櫓を囲んで踊っているのは意外にも女性が多い。
 輪になって踊る姿は高台から見れば艶やかに踊る炎の花のように見えることだろう。
 楓華列島では女性はお淑やかに……、と言う風習が強く有ると聞く。となると、この踊りも場は意外にストレス発散の意味が強いのかもしれない。

「ほー……コイツが本場の夏祭りってぇやつかぁ! いいねぇ! 心の底からこうグングン来るぜぇ!」
「アーザスは本当にお祭り好きですね、そんなに楽しそうにされるとこっちまで移ってしまいそうです」

 涼乃舞百合(黒地に百合を舞い散らした落ち着いた雰囲気の浴衣)に身を包んだシオンは、アーザスと並んで歩きながら笑う。

「おう、移れ移れ♪ 今夜は目一杯楽しもうぜ!」
「ふふ、勿論です」

 先ずは蜘蛛の巣のように整然としながらも隙間なく広がる屋台を見ていこうと道を進んで行く二人。
 本業が何なのか一発で分かるような『安いよ安いよ~、おっ! そこの美人さん、一本どうだい?』などの商売上手なオヤジの声が轟く。そんな陽気さが心地よい。
 これぞ屋台の醍醐味だ、早速焼きトウモロコシを買っているアーザス。アレだけ食べておいてまだ食べる気らしい。
 そんな姿に苦笑させられる。
 自然、先に進むごとに人は濁流のように多くなり人込みに揉まれる事になる。
 さり気無く近寄ったシオンは隣を歩くアーザスの腕に自分の腕を絡ませるのだった。離れぬように、と。

 
 所変わってこちらは反対側の屋台道。
 屋台は盆踊りの櫓を中心に四方へと伸びるように出ている、こちらは北側の通りだ。

 そこには草履型サンダルに赤い紐の付いた小さな巾着袋、そして白とピンクのグラデ生地に赤やピンクの花が散った浴衣に赤い帯を巻いた浴衣を着たラディクスがいた。
 その服装の気合の入り具合からしてウキウキ度の高さが分かるというもの。
 常に音符を頭上に浮かべつつ、歩く足取りすらも軽快に楽しげに踊るようになっている。
 
「綿飴、ジャガバタ♪ カキ氷に金魚すくいはお祭りの醍醐味!! どれがしようかな♪」

 あっちにフラリ、こっちにフラリ。
 軽やかなステップを踏んでは大人たちの間をするりするりと抜けて屋台に勤しんでいく。
 そんな人込みの中でチョコチョコと動く羽が妙に目立っていた。この辺りでエンジェルは珍しい、一発で分かるからとにかく迷子にはなりそうも無いようだ。
 と思ったら、その飾り何処で売ってるの、などと聞かれて困っていた。
 生なんです。

「いいな~ラディクスは体が小さくてさ~。私だったらつっかえちゃうよ」
「お前だって小さいよ。俺なんて186あるんだぞ、さっきからつっかえてばっかりだ」

 モグモグとたこ焼きを食べながらアヤノが少し愚痴を溢す。そしてそれに苦笑しながら突っ込むステールッラ。
 そしてあんたに比べればね、と返すアヤノ。
 折角アヤノも気合を入れて、自分で仕立てた水色の浴衣(裾の方に、鯨の大柄が入ってる)に赤い帯を文庫結びにして下駄をはいて来たというのに人間に詰まりっぱなしなのだ。
 触られるのが嫌と言うわけではないが見る前に触る状況と言うのは少し頂けない。

「お、そこの美少女! リンゴ飴どうだい?」
「リンゴ飴たべる~」

「もう機嫌直ってるし……」

 機転は速かった。
 とにかく祭りは楽しけりゃOKなのだ、楽しめ楽しめっ!
 それこそが祭りの真理、それに従って二人も連れ立って屋台を回っていくのだった。

 ドンッ、ドドンッ!

 っと遠くから響く太鼓の音が心地よい、人々の喧騒も何故か心を安心させてくれるようだ。
 きっと祭りには不思議な力が有るのだろう。
 紺色の甚平に着替えたサルサは小物を売っている屋台でティナへのお土産を探しながらふとそんな事を思っていた。
 よーし、このねずみ花火を買ってってアーザスとかナハトに放ってやろう♪
 次に思っていたのはこんな事だった。
 理由は至極簡単、小物を売っている屋台の隣では花火を扱っている屋台があったと言うことだ。経営者は同じらしい。
 流されまくりの思考である。
 
「よぅし、おっちゃん決まったっ! これとこれをティナちゃんに買って、このでっかいねずみ花火を三つくれぇっ♪」

 銀の蝶の形をした髪飾りと、太ももの太さくらいありそうなねずみ花火を購入してサルサはご満悦そうだ。
 どっちも使う時の事を思うと楽しみで仕方がない。
 喜ぶ顔と、驚く顔。
 と、ふと歩いているとチラリと見かけた屋台の人影の中に小さな白い羽があった。
 羽といえばラディクスだ。

「よっ、ラディクス。何やってるんだぁ?」
「えっとな、飴焼いてもらってるよ」

 なるほど、見てみれば熱く熱せられた鉄板の上に黄色く湯だった飴の現役が焼かれている。
 しかもそれを屋台のオヤジが神業のような技術で変幻自在の形へと変えていくのだ!
 因みにラディクスの飴はこの辺りにも居るらしい、大瑠璃と言う鳥が翼を広げた形だ。今にも飛び出しそうなほど生き生きしていて、飴だというのに羽の一枚一枚まで躍動感に溢れている。
 正に職人技。多分この人は仲間内で神と呼ばれてるに違いない。
 他にもカブトムシ型、ノソリン型、くねりと絶妙な角度で腰をひねらせている美女型など様々な飴が同時に焼かれているのだから凄い。
 発注にはとても性格が出ているようであった。
 
「あ、それそれ、その鳥だよぅ! オジサン凄いなー!!」
「いやいやいや、これでも先代には敵わねぇ未熟者ですよ。ほい、できあがりっと」

 勘定と交換でそれを受け取るラディクス。
 見るからに美味しそうだが、食べてしまってはこの芸術を破壊する事になる!
 罪な飴であった。
 が、どちらにしろこれはお土産にするのだからとラディクスは包んでそれを割らないようにそっとウサギリュックへと入れるのだった。
 いい思い出になりそうだ。



 提灯が揺れ、人々が揺れ……。
 楽しい時間はあっという間に流れていく。そして惜しくも人は時間を巻き戻す術を知らなかった。
 そんなわけで。
 時は進んで場所も変わってこちらは櫓の周り。盆踊りクライマックスの踊りの輪の中。
 そんな所に皆は集まっていた。
 そして意外な人物の特技を目撃していた。


「う……うめぇ……うめぇじゃねぇか、ステールッラ……!!」
「ホントだー、意外に上手よぅ」
「人間誰しも得意分野はありますし」
「すげぇ、ステールッラがここに来て初めて目立ってるなぁ~!」
「……ふむ、中々」
「いやー、人は見かけに寄りませんねぇ」

 褒められているのだろうか? 貶されているのだろうか?
 今一どちらか分からないが、とにかくそれほどまでにステールッラは実は踊りが上手かった!
 先ほどから他人も含めて注目を集めまくりだ!

「お前ら、好き放題いうなよ……」

 溜息混じりにパパンと手を叩いてヒラリと反転するステールッラ。
 それでも踊る手足は止まらない、正確に太鼓のリズムに合わせてステップを踏んでは綺麗な仕草で腕を伸ばしたり、畳んだり。
 大柄な体をまるで舞踏の教科書のように舞わせてしまう。
 体が覚えているとはこのことなのだろう。一族の宗教儀式でよく踊った経験が生かされているのだった。

「くっそー、俺も負けてられねぇぜっ!!」
「いや、負ける以外ないだろう。アレでは」
「言うなっ」

 ナハトの的確な突っ込み見事打ち抜かれたアーザスなのであった。
 彼の踊りは下手ではないが激し過ぎて少々品が無い。
 orz
 なアーザス。
 そこに両手に持っていた食べ物を全部食したらしいアヤノが浴衣を翻してやって来た。心なしか満足げな表情だ。
 多分両手に持っていた食料品を処理したからだろう。

「ステ~~ルッラ♪ 一緒に踊ろうよ」

夏祭り(ねこ作)


絵作成:解説ねこ




「ん? ああ、良いよ」

 少し前に歩いてアヤノのスペースを空けるステールッラ。舞踏会のような優美さは無いかもしれないが、こうやって気軽に入れるのが盆踊りの良い所だ。
 たった今曲が終わった所だったのもあるだろう。
 次の曲が始まるまでに踊りの輪に参加している面子が出たり入ったりしている。入るなら今の内だ。

「おーい、お前らも手が開いてるなら入れよっ! 踊り方なら俺様が懇切丁寧に教えてやるぜ!」

 きっと大雑把に教える事だろう。
 まあそれはいつもの事、折角だからと見ていた面々も入ることにしたのだった。旅行に来ているのから何事も積極的にやらなくちゃ損である。

「ええと、じゃあちゃんと教えて下さいね?」

 と先ず最初の生徒はシオン、そして

「おうっ! 買い物も終わったし、俺もめいっぱい踊るぜぇ~~♪」
「ボク、踊りがは何でも得意よ~♪」
「踊らないと損、と言う奴だな。宜しく頼む」 
「じゃあ、私も久しぶりに踊ってみますよ。……ハッ、あんな所で未成年がお酒をっ!! ちょっと失礼します!!」

 セイル以外のメンバーが参加したのだった。
 セイルはどうやら祭りの浮かれた勢いで飲酒している少年達を発見したらしい。また。
 速い。もう姿が見えないと思ったら既に少年達をシャモジで圧倒していた。
 シャモジは浴衣の後ろに装備していたらしい。
 ……因みに、前半も殆どこれに費やしていたので見かけなかったのだ。
 お勤めご苦労様である。


 月は天高く上り星々は煌々と輝ける夜。
 されど今日ばかりはそのどれも目に入らない。もはや今夜は晴れていた。
 人々は朗々と歌い、転々と踊り続ける。
 今夜に思いを曝け出すように。いつもの夜を壊すかのように。
 至極、明るい夜。
 連帯を持ち踊り歌う姿は晴れやかにして神々しい、踊りはよく神へと捧げるものとされるが、それは実に尤もだ。
 神は極なる自然体たると言われるが故、人々の自らを解放するこの行いは捧げものとして正に適当であろう。
 提灯に描かれた【祭】の一文字が今更のように鮮明に見えるのは。この時が夜が更けた時間帯である何よりの証拠だ。

「もっとこうだ、こうっ! 腰を捻るんだっ、曲に合わせて表情でも踊れっ!」

 祭りの中一際通る声、ちゃんと教えるにしても少し度が過ぎるアーザスの声が響く。取り合えず声だけは良く聞えるからいいか、聞えないよりマシだ。
 踊りにかける執念は本物らしい。
 だがしかし実に楽しそうだ。上の台詞をしかめっ面で言うならともかく、一笑と共に発せられるのだからこれは乗せられるしか無いだろう。

「え、と……こう、でしょうか」 

 手とり足とり教えられるのも悪くは無いかもしれない。ふとそう思うが、止めた。
 甘える時間なら他に有るのだから。
 一方その後ろの踊れる組は。

「簡単そうで中々難しい、シオンは苦戦しているな……………ところで、サルサ。その右手に持って今まさに俺の頭上で点火させようとしている輪っかは。なんだ?」

ギクッ 
「な、ななな、なんだろなぁ~~なんだろなぁ~~?」
「それ、古いよぅ」

 慌てて右手にあったねずみ花火を背中に隠すサルサに容赦なく突っ込むラディクス。
 確かに古い。あの人たちは何処に行ってしまったのだろうか?
 そして友好的に差し出されたナハトの手は。
(出せ)
 と、語っているのだった。
 出したらきっとお返しとして素晴らしいものをプレゼントしてくれるだろう。拳とか。
 サルサピーンチ。


 ………ここから先はあえて語るまい。

 そこ、またかとか言わないっ!
 サルサの為なのだっ! 





<宿の夜 ~夜遊びを掛けた戦い!~>


 部屋割りは妥当に男女で分ける事になった、……とは言え繋がっていた二つの部屋の間に襖があって分かれているだけだが。
 襖を全部開けてしまえば一つの大部屋になる仕組みだ。
 

なら寧ろ最初から一部屋なんじゃ? と突っ込んではいけない、大きいから二部屋なのだ。二部屋と言ったら二部屋なのだ!(ジンエモン氏談)
 この時期は家族単位で泊まりに来る客が多いのでこういう部屋しか残っていなかった、と言うわけである。
 まあ、行き成り予約の手紙もなしに泊まりに来たのだからこのくらいは仕方も無いだろう、二つ部屋が有っただけマシというものだ。
 寧ろ大部屋で多少割安になっているのが有り難い。
 
そんな訳で。
 心ゆくまで祭りを楽しみつくした一行は気持ちよく疲れて宿に戻ってきたのだった。
 ジンエモンさんの奥さんが気を利かせて入れてくれた冷たい麦茶が喉に心地よくて、有り難い。
 既に敷かれている布団の上にバーンと大の字になって寝転ぶのもやけに楽しい。
 蚊取り線香の匂いまで新鮮に感じるのだから、外泊の高揚感と言うのは不思議なものだ。

「ふあ~~、いい汗かいたぜぇ」
「まぁ、確かにそうだが……。お前はかき過ぎだ、浴衣を搾って水滴が出るまで踊る必要があったのか」
「楽しかったからいいじゃんよ~、それよりさっ! 明日もウニ出るんかなぁ、ウニぃっ!」

 ひとっぷろ浴びたメンバーはアレだけ踊ったにも関わらずまだまだ元気といった感じだ、流石に冒険者だけあって体力は皆人並み以上有るのだろう。
 時刻は22時前程度と言うのも一つの理由だろうか。まだまだ外から聞える祭りの喧騒が何処か心地よい。
 因みにセイルは一番襖側の布団に陣取っては、バッチリと見張りを続けていた。
 旅行に来たのか監視に来たのかいったいどっちなのだろう。……多分両方だ。
 一方こちらはもう片方の部屋。

「くー……、すー………」
「ふふ、もう寝てしまってますね。ちゃんとお布団を掛けないと風邪をひいてしまいますよ」

 お風呂から戻って来た途端に凡そ90度の角度でレム睡眠に突入したラディクス。いつもは9時には寝るのに加えて今日はかなり動き回ったのだ、相当に眠気が溜め込まれていたのだろう。
 2,11秒で熟睡だ。
 因みにのび○君の最高記録は0,9秒である。世界の壁は高い。
 気持ち良さそうに自然体ヘソ出しルックと化して快眠する彼女にそっとシオンが布団を掛ける。
 熱気渦巻く(?)男部屋とは打って変わってこちらはホワホワした雰囲気だった。
 人数のせいも有るかもしれない、とにかく少なくとも向こうのように第一次枕投げ戦争は勃発しそうに無い。
 ただ就寝してしまうのは少し早いかな、と思う方も居るわけで。

「寝つきが早いのは羨ましいよ、私は夜ってあんまり落ち着かなくってさ。……あ、そうだ! きっとあいつ夜の街に行こうとか言い出すから私も付いてっちゃおうかな~」

 あいつとは勿論ステールッラの事だろう。

「そうですね、私もアーザスに一言言っておかないと」

 そんなわけで、約二名『鶴の間(男部屋)』に突入の運びとなったのだった。
 一波乱起きそうな予感である。


 さてさて、また所変わってこちらは『鶴の間』。
 恒例の枕投げも一段落ついてまったりとしている時だった。
 
「よーし、そろそろ夜の街に繰り出さないか?」

 何の捻りも無く的中したアヤノの予想、夜も吹けた頃にステールッラの一声が発せられたのだった。ただし隣にに聞えないように小さめの声で。
 声を潜めたって既にバレバレとも知らず、のん気にニヤリと笑う。
 ピクリ、ピクリッ。
 っと反応するアーザス&サルサ。……男は単純な生き物である、特にこの面子は。
 皆もちろんの事ながら親指をビシッとおったてて了解の意を示すのだ、この時を待っていた! と言わんばかりの顔で。
 別の意味でピクリと反応するセイル、勝手に行けとばかりに本を読み始めるナハト。
 因みに今回の本はジンエモン氏から借りた『海流 -連動する陸の気候-』と言う本である。
 セイルは静かに席を発った。
 そしてこの時ひそひそと顔を付き合わせる三人男達による作戦会議が始まったのだった。

「よぅし先ずはだな、俺が下見で見つけたユウ……なんだっけかな? とにかく面白そうな場所が有ったんでそこに……」
「私も連れてってよ~」
「ああ、OKOK、でだ………………………………………………………はへっ?」
「やったぁ♪」

 ギリギリギリ……、と三人が油の切れたカラクリ人形のように振り向くと。
 約二名が立っていた。
 面白いものを見つけた、って感じの楽しそうな笑顔のアヤノと。
 微笑の爆弾を抱えた静かな笑顔のシオンが。
 特に衝撃的だったのは間違いなくアーザスだっただろう。見た瞬間魂が良い日旅立ちそうな顔をしていた。
 そこにサラリとシオンの一言。

「アーザス。もし夜の街に出かけたら………『明日はないと思いなさい』。ふふ」

 優しい声だった。まるで母が子を諭すような素晴らしく優しい声。
 でも確り鉤括弧で強調されてますな。

「は、ハハハハハハハッ! おうっナハト!! その本貸してくれやっ!! 急に興味が出ちまって夜通し読みてぇ気分になった!! 悪ぃなっ! は、ハハ。ハハハハッ!!!!!」

 空前絶後の冷や汗を流しながらナハトにすがるアーザス。激しく苦しげに空回りした言い訳が見苦しい。
 迷惑がるナハトではあったが流石に哀れで仕方なく本を譲るのだった。
 とにかく街に繰り出す気は失せた様だ、命は誰だって惜しい。
 それを確認すると、シオンはアーザスにふっ…と微笑みかけて戻っていく。
 ぎこちない作り笑顔で見送って、……肩で息をして深呼吸しているアーザス。
 まるで紐なしバンジージャンプから奇跡の生還を果たしたかのような顔だ。
 そしてやがて小さく口もとを吊り上げる。

「俺の事は構わず行け、同志たちよ……」

 窓から光を散りばめたような夜空を見上げながら、こう呟いたのだった。
 ああ、哀愁。
 
「………!」

 思わず無言で敬礼して答えるステールッラとサルサ、着替えてくるといって一旦離れたアヤノ。
 夜は更け行くばかりだ。
 そう、その夜がさらに更けた頃、三人は出かけて行った。もちろんこっそりと。
 玄関に有った提灯を借りて夜道を歩いて行く。
 だがまだまだ祭りの大提灯が残っているらしく明かりには困りそうも無い。
 夏とは言え海岸近くは潮風が吹くので夜は少し肌寒い、だがそれくらいの障害があるからこそ楽しみが増すというもの。
 見知らぬ土地でワクワクと足を進める一行………の、前に。影が刺した。

「ん? 誰だろうな、こんな時間に。祭りの会場でも無いのに……?」

 ステールッラが不審げに呟く、どうやら街へと続く道を待ち伏せされていたらしい。
 それにしても、余り大きな影でも無いのにこの存在感の重さは何なのだろうか?
 まるで居るだけで罪悪感を背負わされるような……、あの時の恐怖を思い出すような……。
 鬼神でも宿っているような……。

「んあぁ~? ……ま、まさかっ!?」

 灯篭の光で逆光になっていたその人物に。サルサは提灯を掲げた。
 ……シャモジ。
 ……オバちゃんルック。
 ……何故か光る目。
 この状況を先読みしたセイルが、どっしりと待ち構えていた。

流石にマウサツGG所属だけにこの辺りの地理には詳しい。

「他のお客さんが居る所でお説教をしては、迷惑になりますからね」

 なるほど。無言で出て行った理由がこれである。
 となると近所迷惑になるレベルでのお説教が待っているということなのか。
 光る目がその是を雄弁に語っていた。
 蘇るサルサの記憶。思わず膝が笑い出す。
 全員意見が一致して回れ右をするが、もう遅い、振り返った先にサクッと神速の勢いで万能包丁が突き刺さる。

杓文字手裏剣(ねこ作)


絵作成:解説ねこ



「うをっ!? 危ねぇっ!!」

 セイルって実は高レベルの忍とかなんじゃないだろうか?
 ある特殊な場面において異常なまでに戦闘能力がアップする姿は脅威だ。
 それ以前に本能的に怖い。ククッと笑うセイルが。 

「逃がしませんよ♪ さぁて皆さん、お説教の時間です」

 闇夜に悲痛な叫びと、濁流の如く降り注ぐお説教の嵐が木霊した。
 シャモジ大活躍。
 こうして、あえなく夜の街へ繰り出そう大作戦は失敗したのだった。
 そして。
 このお説教は睡眠を与えてくれなさそうだ。
 旅行先バージョンなので、いつもより沢山語っています。


「アーザス、そろそろ本を返せ……」
「い、いや、どこでシオンが見てるかわからねぇ! と、隣だしよ……!!」

 こちらも別の意味で眠れない夜となっていた。
 途中まで読んでしまったナハトも続きが気になって眠れないのである。
 アーザスももちろん眠れない。
 普段なら活字の12文字も読めば爆睡出来るのだが、今夜は72ページも読んでしまった。それだけの恐怖。

「くー……、すー……」
「ふふ……アーザス………」

 結局、快眠を心行くまで楽しめたのはこの二人だけなのであった。
 やけに静かなのに騒がしい夜へ小さな寝息が溶け行く。
 いつの間にか祭りは終わっていた。
 蝉さえも鳴くことを止める程の夜―――――……。






<大海原 ~二日目~>


 気持ちの良い朝の散歩を済ませ、元気良く寝不足の隈の出来そうな顔(約二名を除く)を洗い、『くじらごう』に乗り込んで。
 出航!
 今日も機嫌がいいのか『くじらごう』の立てる快音はまるで雄々しく吼えているかのようだ、相変わらず元気良く大海原を真っ二つにしていく。
 ホエールだけに吼えるってか。
 ……失礼。
 と、とにかく! 荒波を切り裂く快音をバシャバシャと轟かせて、『くじらごう』はユトゥルナ目掛けて駆っていく!
 今日も爽快に天上は晴れ渡っていた。

「うう……、あたまいたい……し、さらにきもちわるい……そしてクスリどこいった……」

 行き成り雰囲気を打ち砕いてくれたのは、船には慣れているはずのステールッラであった。
 先日アーザスとサルサが『くじらごう』に完敗したあの手摺に今にもリバースさせそうな気を纏ってもたれ掛かっている。
 頭痛の分をプラスして奴らよりレベルの高い酔いかたをしていると言えよう。
 昨晩お説教を終えた後に憂さ晴らしで飲み過ぎてしまったのだ、過度の頭痛持ち故に飲み過ぎてしまった後は当然こうなる。
 哀れ。

「なんだぁ、酔ったのかぁ~? だらしねーなぁ」
「そうだぜステールッラ、酔いなんてもんは気合入れりゃあ治るもんだっ! 気合が足んねぇぞ気合がっ!」

「お、おまえら……なあ」 

 喉もと過ぎれば熱さ完全滅却な二人なのだった。
 ただ体の方が記憶力は良いらしく、確かに二人とももう全然酔っては居ない。即ち言いたい放題とはこのこと。
 突っ込みたいが、突っ込む気力が出ないステールッラだった。
 今は二人よりも根底より込み上げるリバースの衝動と戦わねばなるまい。そして早いとこクスリを見つけなければ。
 だがガサゴソと荷物袋を漁っても全然出てこない……、何処にやったのだろうか。
 と、その時ステールッラの頭上からアヤノの声と

「ほい、薬。お茶はそこに有るからちゃんと飲みなよ~」

 同時に薬の入った包みが降ってきた。中身は勿論愛用の頭痛薬と酔い止めだ。
 こうなるだろうと分かっていてアヤノも用意していたのである。
 流石に長年付き合った仲だ、肝心な所で頼りになる。

「ありがと、アヤノ」
「どう致しまして」

 ツーとカー、難しい言葉など必要有るまい。
 簡単な言葉に笑顔だけ有れば事は足りる。
 
「ストーーーップだぁ~~!」
「へっ?」

 と、ちょっといい感じだった所にいつの間にか船縁へ移動していたサルサの声が響いた。しかもやけに気合の篭もってる声だ。
 まるで重大な何かを見つけたかのような声。
 タイミングが悪いものだ、本人こっちを見てたわけ無いから悪気は無いのだろうけど。
 と、心の中で肩をすくめるアヤノ。
 気を取り直して操舵室から顔を出して応える。

「何、サルサさん? イルカでも見つけた?」
「船だよ船っ、でっけぇウニをこ~~んなに乗せた漁船が今横を通り過ぎてったじゃんか! ぜってーこの辺りにウニが沢山居るって! 止めて捕獲だ、収穫だぁ~~!!」

 ……はいっ?

「サルサ、ウニなら昨日アレだけ大量に食べただろう……」
「いーーやーーだーー、俺の復讐は終わってねぇんだぁ~!! ウニめぇっ! こないだの仕返しだぁこんにゃろぉ~っ! 止めてくれぇ~!」

 ナハトが一応止めようとするが、またもいつに無く真剣なサルサをみて『これはダメだな』と呆気なく判断を下した。
 何しろ両の目が燃えている。くじらごうは止まってもこれは止まるまい。
 熱血スポ根の再来だろうか。
 なんだか知らないが最近サルサは異様なまでにウニに執念を燃やしているのだ。
 それは周知の事実なのだが、その原因はいまだ謎だった。

「はぁ、何でまたそんなにウニに拘る……」
「痛かったんだぁ~っ!!」
ヾ(*`Д´*)ノ"

 地団太を踏んでウニへの熱き思いを撒き散らすサルサ。
 痛かった? そう言えばサルサの右足に絆創膏が張ってあるが……。
 謎だ。

「ああウニね、良いよ。取ってきてあげる」

 謎はとにかく残っているが、その願いは呆気なく承認されるのだった。
 それはアヤノの得意分野だから。
 自分に出来る事なら気前良く引き受けるのが彼女の良い所だ。流石海の女。
 パパッと着替えるとシュノーケルをつけて早々と海に飛び込んでしまう。慣れた動作だ。

「おお、早業ですね」
「アヤノ格好良いよー♪」

 その姿はすぐに沈んで海の中に消えていく。水しぶきも殆ど立たない。
 因みに『くじらごう』を止める作業はステールッラがやっている。これもツーカーの仲がなせる業だ。
 ただちょっと酔ってるのが計算外で辛そうだったけど。

「行ってらっしゃいませ。……アヤノさんの事ですから、ウニが無くても何か採って来てくれるでしょうね。お昼は海の幸を使った料理でしょうか?」

「おうっ、勿論俺が腕をふるっちゃるぜっっ! 待ってろよウニぃ! 焼いて焼いて食べてやるからなぁ~~っ!!」

 ちょっと目を離した隙に調理の準備万端の装備を整えているサルサ。
 因みに先日のウニ争奪戦の後、サルサは確りジンエモン氏からウニの調理法を聞きだしていたのだった。
 料理人として当たり前の事なのだが、今回はウニへの執念も作用してか聞くだけでなくやたら詳しくメモまで取ってある。

 ウニ執念はけっこう役に立ったのだった。
 だから。ま、いっか、と皆は謎を残しつつも納得してしまうのだった。
 勿論、この後アヤノは大量にウニを収穫してサルサの復讐に大きく貢献したのである。
 思いがけない所で豪華な昼食が出てきたのだった。


 この後『くじらごう』は希望のグリモア付近の複雑な水路を縫うようにして進み、旧パンポルナの在った辺りの浅瀬を迂回する航路を取る。
 翌朝にはユトゥルナの穏やかな海が見えてくる筈だ。
 気のいい渡り鳥がそう教えてくれたような気がした。

「なんなら獣達の歌使います?」

 ……描写に突っ込まないで欲しい。





⑥ユトゥルナ編へ続く
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