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Medium Coeriへようこそ。お手数ですが初めてお越し下さった方は『始まりの挨拶』を一読し、納得なさってからご観覧下さい*このブログは同背後PCが共有で使っています。同背後バレが嫌な方は申し訳無いですがお引き取り下さい

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偽シナリオ夏の船舶旅行!~ウニへの復讐~【⑥ユトゥルナ~エンディング】

旅団「LAD*UNA」【無限】にて行われた偽旅団シナリオ【⑥ユトゥルナ~エンディング】です
シナリオの作者は、旅団の団員だった「アーザス・ファルク」さん


家からはラディクスで参加させて頂きました
シナリオが長いため全部で6つ程に分けて掲載しています。

シナリオ途中には参加者が描いた偽ピンナップも掲載されています。
ピンナップ製作者は「アーザス・ファルク」さん「ウミソダチノ・アヤノ」さん「解説ねこ」の3名。
掲載許可並び、素敵作品どうもありがとうございましたノシ

*なお、今回編集するにあたり、読みやすさ重視で上から読めるようエンディングから逆流れでUPしています。
*シナリオ本編は全部掲載すると重い(長い)ため追記にて掲載。

<ユトゥルナ ~水上都市の誉れ~>

「ふぅぇーー……んぁ、ココがユトゥルナかぁ~……綺麗なトコだなぁっっ♪」

 言うまでも無いだろう。
 その景観に見惚れたサルサが嬉しさのあまりうろちょろしている、しかも千鳥足で。
 サルサにとってここは憧れの街、だっただけに直に見て感動し過ぎてバランスを崩してるのだろうか?
 このことから推測するに、一行は無事ユトゥルナに到着したのだった。
 勿論ステールッラも途中で回復してピンピンしている。
 今は、全員『くじらごう』から下船して、全員ユトゥルナの空気と景色に感動している真っ最中なのだった。


 相変わらず燦々と照りつける太陽の光、それを水面が反射して輝いている。まるで光る魚の群れが水面付近を泳いでいるみたいだ。
 街の中に在る海全てがキラキラと鏡のようで美しい。
 この街は水の色に輝いているのだった。

 水上都市ユトゥルナ。

 ドリアッドの森南西に位置し、海の上に小船を連ねその上に建物が――街が作られている。
 この地域は海中にグリモアが存在する為か、一年を通して波は穏やかで気候も安定している。魚介類の他には天然真珠も産出する豊かな街だ。
 不定期だが、セイレーンの商人との交易もあり、海上貿易の拠点ともなっている。
 ユトゥルナの水上マーケットは観光地としても有名で、ドリアッドの森南部の中心的な都市である。バーレルと対成す同盟二大港の内の一つだ。
 つまり、この時期はこの一行のような人間が沢山居るということ。
 水上マーケットには、セイレーンの商人が交易の為に訪れる事もある。現在はセイレーンの王女が滞在……いや住み着いているらしい。
(ユトゥルナGGより一部文章を拝借)
 
 一行が暫しボウッとその景観を眺めていると、目ざとい小船がそれを見つけてすいすいと他の家(船)を避けて近寄ってきた。
 明らかに目標は自分達だ。となると……『渡し舟』か、なるほど、船には分かりやすくこう書いてあった。
 恐らくは観光客相手のガイド商売なのだろう、人の良さそうな顔の船頭に多少飾った船、見た目からしてすぐにそれと分かる。
 渡しに船、とは正に文字通りこの事だ。
 今正にアーザスが、この街の地理は知らんから適当に見て回れ、とか言い出そうとしていたのだから。
 しかし地図も用意しないでよく旅行なんて企画したもんである。

「やあっ、今日は。皆さん旅行客だね、ユトゥルナは初めてかい?」
「ああ、実はそ………ぐぁっ」
 
「そうそう、初めてなんだぁっ! おっちゃん、ここいいトコだなぁっっ♪ 俺すっげぇ気に入っちまったよ」

 グイッと出てきたサルサのパワーに見事押し負けたアーザス。イの一番でユトゥルナの海を堪能してしまう、……ところで危うく何とか踏みとどまった。
 街の構造上通路の足場はそれほど広くないのだ。
 
「そうかそうかっ、気に入ってくれたかぁ! 有難うよ、兄ちゃん! ……でだ、俺はそのユトゥルナ生まれの38年寝かせたユテュルナっ子なんだ。ここのことなら何でも知ってるつもりだぜ。そこでどうだい、この船に乗ってみないかい? 案内してやるよ、このユトゥルナを。丁度いい事にこの船8人乗りなんだ」

 さり気無く自分をカウントして無いが、その辺は海の男、こまけぇことは気にしてないようだった。
 無論8人ともちょっとは気になったわけだが。
 ラディクスにボーっとしてもらえばOKとか色々と問題が有りそうな事を考えて、サルサは二つ返事で乗ると答えたのだった。
 幸いお代もそれほど高くない。
 了解を聞いて任せろと更に気持ちのいい笑顔を浮かべる船頭のオヤジ、流石に仕事柄だけあって爽やか系統だ。

「よっしゃ、じゃあ一人ずつ乗りなっ」

 恐る恐る入っていく8人の旅行者達、踏み出してみると中は案外広くて詰まるという事は無かった。荷物も余裕で積める。
 殆ど揺れたりもしない、オヤジの切符の良さとは反対に小船は中々紳士的な性質のようだ。
 流石に客商売だけあって船底の敷物にまで請っている。このオヤジとは縁もゆかりも無いような鮮やかで優美な花柄、シオンが敷物の花柄の花の名前を言い当ててはオヤジが感心していた。
 この辺りで咲く海辺の花なのだそうだ。
 更に乗ってみて分かった事だが、アヤノが言うにはこの小船の浮力と安定感と言うものはかなりのものなのだそうだ。
 船の両端につけてあるスキー板のような部品がそれを成しているらしい。
 流石ユトゥルナ、水上都市の誉れ高い文化が早速このお上がりさん染みた旅行者達を圧倒している。 

「んじゃあ、ユトゥルナの見所って奴をぐるっと回ってもらって商店街の方に止めるってことでいいな? そっからは自由行動だ、好きな時に海上ホテル『ベルタ』の13番室に集まってくれ」

 その揺れない小船の上に難なくアーザスは立つと、簡単に今後の予定を話した。
 正に簡単だ、この後に話が続くわけでもなくこの台詞だけ。
 大雑把もここまで来ると見事だ。
 アーザスはあっても無視する予定の反対意見が無いことを確かめると。

「じゃ、頼むぜオヤジ」

 と船頭に代金を渡したのだった。
 ギーコギーコと音を立て、意外にスピードの出る小船がユトゥルナの入り組んだ構造の中に進み入って行く。
 両脇に止まる大きな船の間をすり抜け、頭上にひらめく洗濯物の干してある吊り紐を潜り抜け、巧みな技で小さな水路を直角に曲がり開けた視界に飛び込む海の噴水に感嘆する。
 美しい中に人々の暖かさを感じる街だった。
 そう、新たな街を見た。
 新たな場所にする人々を見た。
 これが、この高揚する瞬間が旅行と言うものの醍醐味なのだ。

「え~、あちらに見えますのがセイレーンの王女さまがお気に召したという宝石店『ブルーライト』、そしてその反対側に有りますのがこの国一番の安酒処『蒼凪亭』でーございます。
 思えばかあちゃんに騙されて高ぇ指輪買ったのもブルーライトでした、いまや小指でも通りません。そのくせ蒼凪亭で飲んでるのをいつも首根っこ掴んで『飲み過ぎだ』って言って連れ戻すんですよ。お前が食べ過ぎだっちゅうに。
 ……ああっと、そしてそしてー! 見えて来ましたあの大きな大きな鯨みたいな建物こそが我がユトゥルナの誇る最高の宝! ユトゥルナ第一造船所―――通称『マザー』でーあります! 微妙に私にとっては恐ろしい通称ですよー」
<注意:この辺りは背後がノリで適当に書いてます。実在しません>

 何故か口調の変わってるオヤジ、ノリノリで現場解説に近い観光案内を熱弁している。
 船縁に足を掛けて身を乗り出しては大きな身振り手振りで各地を紹介する様は、別の意味でも面白かった。
 と言うか下手な一人芝居よりもこの人のトークの方がよっぽどか面白い。
 雰囲気が無いのがちょっとだけ問題ではあったが。
 しかしこれだけ他に集中しながら大量に行き来している他の船にぶつからないのが実に不思議だ。その辺り流石はプロということなのだろう。
 
「アレが造船所ってトコかぁ、でっっけーなぁ~~っ!」

 サルサがまるで一つの大陸とも思えるような船を見て感嘆する。いや、圧倒されて感動している。

「でしょうっ? このマザーは200年以上もの間ずっと拡大改築を繰り返してきたっつう、いわばユトゥルナの結晶なんでさー!」
「すっげぇ、すっげぇ~よなぁそれっ! 心篭もってんだなぁ~」
「そりゃ勿論でさあっ! ユトゥルナ生まれの人間であそこに世話になった人間がいなけりゃ、あそこに援助やらさし入れやら手伝いやらしなかった人間もいない! マザーは俺たちの誇りですよー誇りっ!」
「んぁ、いいなぁそれっっ、一丸となってるって感じだよなぁ! 俺も軽食でもさし入れしてこよっかな」

 そしてサルサは先ほどからはしゃぎっ放しだった。
 オヤジもトーク全開爆発しっぱなしだ。
 ユトゥルナに来ている上にその観光案内を受け更に小船に乗って皆と一緒旅行……と言う条件化のせいでサルサ内のノルアドレナリンがバケツをひっくり返したみたいに分泌されてるようである。
 オヤジもこの商売初めて久々に食いつきがいい客を見つけてヒートアップしているようだ。
 そろそろ目にキラキラが出て来てもおかしくない、そんなノリ。
 この二人だけ異様に盛り上がっている。

「奥さんのお気持ち、よぉく分かりますよー」

 そして先ほどのオヤジのトークを独特な受け方をしているセイルであった。
 気が合うと言うか、確かにその奥さんとは『飲んでる人間をどう扱うか』について深く語り合えそうだ。
 そして語り合った後は更に強大な存在となって戻ってくるであろう。

「オヤジ、いや我が同胞よ……今度一緒に飲もうぜ。語り合おうぜその苦労っ」
「いいね、それなら俺も一緒に連れてってくれよ!」

「……尻に敷かれる者たちの仲間意識か」
「「なにぃっ!?」」

 事ある毎に誰かと酒を飲みに行こうとするアーザス&ステールッラの酒豪コンビではあったが、このオヤジとは更に妙な連帯感が生まれていた。
 そう、まるで疲れたお父さん同士が同僚と語り合うような、そんな連帯感が。
 それをナハトにズバッと斬られていた。
 なにぃ、とは言ってみたものの誰も否定できないのが、この遠い目をした男達の哀れさかな。
 酒の肴は愚痴で決定と見て間違い無さそうである。

「蒼凪亭のとなり美味しそうなお店があるなっ、……うぅ。えーと」
「喫茶店『微風』(きっさてん・そよかぜ)ですか?」
「そうそれなっ! シオン、あそこ皆で行こうよぅ」
「あ、それいいね、私も乗ろっと♪」

 色々とハイテンションなノリが横行していたが、この近辺はなんとか平和的なようだ、和みムードである。
 唯一隣を行き来する船に見られても恥かしくない。
 いやむしろ見せ付けるべきか?
 
白の涼やかなワンピースを着たシオンの風と小船に揺られる姿はユトゥルナに良く似合っていたし、それに対成すように黒い、肩と胸元を大きく出した魅惑的なシャツと白いゆったりとしたズボンでコントラストを出したアヤノの姿も一度見たら忘れられまい。
 その美しさで定評のあるユトゥルナの観光とあってからか、女性陣はかなりファッションに力が入っていた。
 特にアヤノはかなりの量の着替えを持ち歩いている洒落者ぶりである。
 ラディクスはいつもの服だが、それだからこそOK。
 ただでさえ観光客と言うのは声を掛けられやすいのだ。勿論、他の男達が黙って見ているわけも無かった。
 大抵海辺の町にはナンパ師は居るものである、夏なら旬なので尚の事。お約束だ。
 ……の、だが。 

「よぅ、そこの…か……………………………、失礼しましたー!」

 お決まりの台詞が最後まで言われる事は、無かった。
 常に大弓を持ち歩いているアーザスやら常に捕鯨銛を持ち歩いているアヤノやら、オマケに常に戦闘服のステールッラ……。
 このめんばー、実はやたら武装している人間が多い。
 そんなのが目を光らせていたりするお陰で、大抵のナンパ師達は軽く挨拶して回れ右をしていくのであった。
 それでも言い寄ってきた不届き者にはセイルのきつーいお説教が待っているという仕組みである。最強だ。
 特にアーザスの眼光がヤバイ、弓だけに遠距離から撃ってしまいそうだ。
 実はこれ、硬気功(武術気功)を使った技の一つで目から気を送り込み睨みで相手を気押すというものなのだが。
 こんな所で使うなよという話である。

「あの人たち、何で逃げていくのでしょうね?」
「さぁ~な?」

 当の本人は知らん顔していた。

武装組(アヤノさん作)


製作者:アヤノさん



<所変わってこちらは連船商店街『イルカ通り』>


 まるでイルカの群れのように気ままに寄り添い合い、楽しく切り盛りされている商店街。
 そんなこの商店街の気風からこの名前が付けられたのだそうだ。
 なるほど、毎晩商品の仕入れのために移動していた商船が毎朝ここに戻って来て気ままな配列で商店街を形作るとは、個々の個性の強いイルカのようだと言えなくも無いだろう。
 因みにアヤノがこの名前を気に入っていた。……イルカとは小型ハクジラ類の総称で4m以下の種類をそう呼ぶのである。
 海上ホテル『ベルタ』はこの商店街からなら何処からでも見ることが出来る。
 商店街の船は細かく移動する必要性から必然的に少し小型なのだ、だから多人数が泊まるホテルである『ベルタ』は商店街から確りとその看板が見えるのである。

 とにかく、ユトゥルナ案内のオヤジと別れた一行はこのイルカ通りで分散して自由行動をしていたのだった。
 それぞれの船が長い板を掛け合って即席の大通りを作り上げている、その上を歩く。
 石畳でも土でもない、木の板の大通り。なんだか新鮮でワクワクしていしまう。
 
「なぁなぁ、海草あんみつ……ってなんなー?」

 喫茶店『微風』にやってきた女性陣、そして早速メニューをみて首をかしげているのはラディクスであった。
 あんみつに、海草?
 そ、そのまんまなのだろうか。それとも海草を利用して作るお菓子などが乗っているとか?

「さぁ……、寒天が沢山入っているのでしょうか?」
「案外ワカメとかが大量に入ってたりしてね」

 微風と銘打つだけはあって店内は窓が多く取ってあり、どの席も風通しが良くて心地の良い雰囲気だ。時より風に揺られる陶器の風鈴の音も風を感じさせて風流である。
 紅茶を飲みながら答えるのはシオンとアヤノ、因みに二人とも無難に普通のあんみつとショートケーキを頼んでいる。
 虫の知らせ、女の勘というやつか。
 気になったがこの後お土産を買う予定が有るのだから無駄遣いする危険は避けたほうがいい、結局ラディクスもノーマルあんみつとソーダー水を注文したのであった。
 白い微風をイメージしたロゴ入りの帽子を被ったおばさんが注文を入れると、殆ど待つ時間も無くそれらを手際よく運んでくれる。
 お味は中々だ。
 暫し雑談に花を咲かせる乙女達。
 ……因みに後で分かった事だが、海草あんみつとは本当にワカメやヒジキが入っている健康食品なのだそうだ。


「おぅおぅサルサぁぁーー、ティナにこれを買ってってやったらどうだぁぁ♪ んっ? 薬指にはめてくれってよ」

 その頃アーザスはオヤジモード全開でサルサに迫っていたのだった。
 ものすんごく楽しそうだ。
 ここは宝石店『ブルーライト』、店内は店名どおり明るい青に統一されていて明るく透き通った印象を受ける店である。
 売っているものも真珠を中心にエメラルドやサファイア、ルビーなどと青に映える物ばかりだ。
 高級なものから子供でも買える小物まで扱っていて、そこにこの店独自の親しみやすい印象を受ける。
 アーザスにはオヤジ臭い印象を受ける。

「なっ、あ、アーザスこそこれなんかどうだぁ~? ルビーの宝石言葉は仁愛とか熱情なんだぞぉ♪」
「………………買えるもんなら、買ってるっての」

 サルサの苦し紛れのカウンターは見事にアーザスの急所を貫いたらしい。
 巨大な影を背負ったかと思ったらショーケースに手を着いてガックリと項垂れている。
 彼は赤貧であった。
 実際の所あの渡し舟のオヤジに払った代金が全財産の数割を占めていたくらいなのだ。ルビーなんて、ルビーなんてっ!

「おーいアーザスー、戻って来いよー」 

 一緒に冷やかしに来ていたステールッラが肩を叩くものの、ブニョンブニョンと妙な感触が帰ってくるばかり。
 こいつ何者なのだろうか。
 ともかく、浮いていた。サルサはともかくタダでさえ黒マントを着たアーザスや戦闘服のステールッラが宝石店に居るだけで浮いていたのにこの影だ。
 連れ立って冷やかしに来たはいいが、思ったよりもかなり居辛い空間になってしまったようだ。
 貧乏人には所詮縁の無い場所と言う事なのだろう。
 
「他の店、行こう……ぜ……」
「あ、ああ、そうした方が良さそうだな」 

 二人は見繕っていた土産物の精算を終えると、アーザスを引き摺ってブルーライトを出て行くのであった。
 多分店員の脳裏には確りとこの三人の姿が刻み込まれたことだろう。
 変な奴らとして。


「ふーむ、中々上手いものだな」
「そうですねぇ、私もこんなに上手く描いてもらえるとは思いませんでしたよ」

 と喋りつつも首も表情も動かさないように注意している二人。
 実際は多少動いた所で問題は無いのだが、そうしても似顔絵を描かれていると思うと緊張してしまうのが人の性である。
 それともう一つ。途中で下書きを見せてもらったのだが、それがまた本物よりリアルなほど上手かったのだから失敗させるわけにはいかないと思わず角ばってしまうのだ。
 
ここは商店街の一角、道の端っこにイスが置いてあって二人はそこに腰掛けている。
 そう、ナハトとセイルは歩いている途中でこの夫婦で似顔絵描きをしているらしい二人に呼び止められ、ことわる理由も無いので一枚ずつ似顔絵を描いてもらうことにしたのだった。
 案外似顔絵とは思い出に残るものである。描き手とモデルの気持ちの双方が残るのだ。
 待つこと40分程だろうか。
 サルサやアーザスほどに気が短くない二人は、それほどストレスを感じることも無くこの夫婦絵師から『もうすぐ完成だよ』と言う言葉を受けとった。
 
「じゃあ、今日の日付と『ユトゥルナ観光記念』という文を入れて欲しい」
「分かりました、すぐ出来ますからね」

ユトゥルナ(アヤノさん作)


製作者:アヤノさん



 こうして絵師たちが最後の仕上げに掛った頃だ、不意に後ろから声が掛けられた。
 っ! とっさに振り向けない!
 武人として鍛えているナハトには大いに悶々とする出来事だったことだろう。

「二人とも凄く上手く描けてますよ。これは、良い思い出になりそうですね」

 やってきたのはシオン、そしてアヤノとラディクスの三人である。
 この夫婦絵師はよく喫茶店で軽食を食べてから仕事を始めるので、自然と仕事場は喫茶店『微風』の近くなのだ。
 っと、そうこうしているうちに絵が完成したようである。
 即席の額縁に入れられたそれは似顔絵と言うより寧ろ写実主義の美術作品の名作だった、リアルなのに淡い色使いがなんとも独特でふんわりしている。
 一言で表せば巧い。

「これがオレか……、新たな自分を見せられた気分だな」

 別に強くデフォルメしているわけでも、ゴマを摺ってハンサムに描いてあるわけでも無い。ただ自分が描いてある、自分でもそう認めれる。
 それなのに新鮮であるのは何故だろうか。
 それはきっと。鏡に映った自分で見る自分と、他人が見る自分との違いなのだろう。
 良い作品なだけでなく、よく見れば実に興味深い一枚だ。

「お嬢さんたちも一枚どうですか?」
「あ、いえ、私は結構です」

 実際興味は有ったが、これだけの似顔絵ともなるとそれなりに時間も掛かるだろう。
 お土産のペンダントなどを探す時間が欲しいのでシオンは断る事にしたのだった。

「これからブルーライト行くよー、セイルとナハトも一緒に行く?」
「そうですね、ではそうさせて貰います♪」
「……先にサルサが居たりな」
「あー、それはあるかもね」


 残念ながらその時にはサルサは既にアーザスを引っ張って店を出た後だった。
 ただちょっと目立っていたこの三人。
 噂になっていたのがセイルたち五人の耳に入って失笑を買ったのだった。


<水上都市の夜 ~それぞれの夜~>


 そう、海上ホテル『ベルタ』はかなり広かった。
 ここが船の上とは思えないほどの広さの上に三階建てで部屋数は百近くもある。
 作りも確りしていて地震にも強いらしい、オーナー曰く『陸よりも安全なホテル』なのだそうである。
 ディナーで出て来た新鮮な海の幸やセイレーンとの貿易で仕入れてくる珍味も味、質共に文句の言いようが無い。
 そんなところに泊まれた理由が、アーザスがポーカーでとある男性の身ぐるむ剥がすまで大勝ちして、勝ち分として宿泊券をゲットしたからと言うのがなんとも情けなかったが。
 まぁ元を四の五の言っても仕方ない。楽しめば良いのだ。
 さて、こうも広いとなると出口も沢山あるわけで……。
 今夜は約三名ほどセイルの目を盗んで逃走したようであった。

「まったくあの人たちは旅行を何だと思っているんでしょうか……夜遊びなんて言語道断! 逃がしませんよーっ!」

 しかし逃走して終わりではないようだ。
 追撃を振り切れるかどうかが勝負のようである。今回はお互いに地理を知らない、公平なバトルだ!
 夜分だと言うのにエルフの如き眼光の鋭さでホテルを飛び出していくセイル。
 相変わらず速い。

「アイツも本当に拘るな……」

 ロビーでその苛烈な様子を見ていたナハトは一口コーヒーを啜り、そう呟いたのだった。そこまでするのかと今更ながら驚きだ。
 まぁ、これで暫くは静かに本を読めるというもの。
 セイルの姿が見えなくなるまで見送ると、またソファーに腰を下ろして視線を本に移す。香草を混ぜてあるランプの匂いが心地良い。
 今回読んでいるのは商店街の本屋で購入した『真珠の語るユトゥルナの歴史』と言う本である。
 ユトゥルナの代表的な産物として真珠は遙か昔よりユトゥルナの人々と深い係わり合いの中にあった。その為に争いが起きた事もあれば、それを使い平和を築いた事もある。そんな真珠の出来事を纏めた内容である。
 これがあれば夜は退屈しないだろう。
 さて、一方もう片方の居残り組みであるラディクスはと言うと……。

「くーー……すーー……」

美味しい夢(アヤノさん作)


製作者:アヤノさん



 又もや部屋で寝ていた。
 そう、9時ジャストには寝始めるラディクスの習慣はかなり書き手を泣かせてくれる。
 ………な、何か書かなくては。出番がこれで終わってしまう!
 エンジェルの場合小さな羽根は体重を支える事が出来ないほどに弱い部分である、そのため仰向けに寝るとどうしても羽が痛い。
 故に横になるかうつ伏せになるのがエンジェルの基本的睡眠ポーズだ。
 ラディクスもその例に洩れず今回もうつ伏せでコロンと寝ていた。よほど昼間のあんみつが美味しかったのか口を少しモゴモゴと動かしている。
 夢を見ているのだろう。
 一般に夢は脳が記憶を整理する現象と呼ばれており、その日有った出来事を回想することも多いのだ。ただ余りそれを夢を覚えていない。
 整理する現象、つまり見たものの大半は整理して記憶から消去されるからである。
 ………無理やり描写した所で次の場面へ行くとしよう。(ぉ

 抜け出したのではなく、ちゃんと断って夜の散歩に出かけた二人。
 月夜の水上都市は想像以上に幻想的であった。


 月輪

 その黄金とも白銀とも取れる見事な天体が大地を、いや母なる海の一部を照らしていた。
 月夜に提灯。
 そんな諺が有るように、月と言う物は意外なほど夜を照らすのである。とも知らず明かりをつけたがる人間は恐らく、夜の明るさを知らない都会者だろう。
 一度は知ると良い。月も星も無い夜であろうと人は物を見ることが出来る。
 月は特大の灯りだ。
 その明るき夜を並んで歩く二人の手に灯りは無い。月夜の明るさを知る二人だった。
 尤も、例え暗き夜だとしてもこの二人にはお互いに体温で居場所が分かるのだから、それ以上求めるべくも無いのだが。
 いや、例え夜目など無くても二人は光を求めないだろう。
 繋がれた掌がその理由を語る。
 夜風が吹く。
 黒のマントがはためき、純白のワンピースが翻った―――――――かもしれない。
 見ていなかった。
 お互いの顔で見えなかった。

 台詞は、無い。

 幾許も無く前に記した事だが。
 通じ合うツーカーの二人に言葉など無粋な物は必要にならない。
 そう。 
 闇夜に笑顔さえ見える。 

シオン・アーザス(アーザスさん作)

製作者:アーザスさん

ラヴァーズ(アヤノさん作)

製作者:アヤノさん


 転じて。
 ここは夜のお店『トゥルーラヴァーズ・ユトゥルナ支店第5号店舗』。ネオンで彩られた看板と店名がなんともそれっぽいお店だ。勿論電球ではなく色ガラスを嵌めた灯篭が光源である。
 看板を持って呼び込みをしている多分アルバイトなお姉さんも際どい衣装でそれっぽい。猫耳は外せません。
 そう、それは良かった、お姉さんも美人だ、……けれど『~5号店舗』まで大文字で書く必要はまったく無いような気がした。
 何故アレを大文字で? 何故? 何かメリットが?
 ……世の中には変なこだわりと呼ばれる無駄が一杯存在するのだ、それに一々けちをつけてはならない!
 取り合えずそれで納得しておこう。
 きっと店長の趣味なのだ。
 さてさて、中に入ればそこはやっぱり暖色系のライトが照らすお酒の香り漂う夜のお店。ジャズ風味のBGMも中々選曲センスがいい。
 調度品も一流だ、高級そうなソファーに座れるのも楽しみの一つと言って過言ではないくらいだろう。
 接客に当るお姉さんも相当な美人揃いだ、もとモデルさんか現役かと思わせる上に話術も巧みと来ている。お酒も嗅いだだけで分かる高級品しか置いて無い様子。
 つまり高そうなお店だった。
 どこのお大臣が来る所なのだろう? 一般庶民には分からない。

「い、いいい、勢いで入っちまったけど、ここ明らかに高級すぎないか?」
「で、ででで、でもさっ。ここで帰るのも見っとも無いぞぉ?」

 まるで財布の中身が震えとなって体に伝わるかのようであった。
 アレだけ買い物をすれば中身が寂しくなるのは当然の結果だ。それでこんな店に入ってしまったら……。……ああ、象牙の置物が恨めしい。
 小声で話すサルサとステールッラの声も心なしか震えている、こーゆーお店では代金が払えないと黒服サングラスのアンちゃんが出てくると相場が決まってるのだ。
 そしてわけも分からないうちに連れ去られて………恐ろしや。
 戦々恐々とするサルサとステールッラ。
 ただアヤノは違った。

「ふふ、だったらいつか私の船、乗ってみる? あなた達ならサービスしちゃうから♪」
「すごーい、アヤノお姉様カッコいいー♪」
「よ、海の女ぁー♪」

 肝っ玉が据わっているのか開き直っているのか。
 暗くなってる男二人を差し置いてアヤノは大モテだった。というかラブラブだ。
 一番所持金が少なかったのがアヤノのはずなのだが。
 黒いノースリーブの胸元の開いたワンピ着て、そこからゴージャスな黒いケミカルレース飾りのブラをちら見せするの。女の子口説こうかしら、きゃっv(本人談)
 ……魅力と言う点において男二人に勝っちゃったらしい。
 むしろ押しの強さの勝利だろうか?

「「……はぁ」」

 約二名の敗者が項垂れていた。
 羨ましいぜアヤノっ! 
 だが彼らがそれ以上溜息をつくことは無かった、かといってアヤノにべったりの女の子が来てくれたわけでもなく。
 溜息をカットするかのような予想外の事態が起こったのだ。
 豪快に開かれる扉。
 ガランガランと鈴の音がけたたましく鳴り響く。
 登場したのは予期せぬ第三者。
 オバちゃん。

「……ぜぇ、ぜぇ!! 見つけましたよ三人ともぉ……!! 旅行に来て夜遊びなんて言語道断です、不潔です粗忽です不埒です!!! 昨日言って分からなかった分お灸を据えますからね、さぁ帰りますよ!!」

 ドーンと突きつけられるおシャモジ。
 考えてみれば黒服さんよりはマシだけど、それでも、それでもあのお説教は厳しい!
 ああ、でも今帰らないと料金がぁ!!
 セイルの登場に苦悶する逃亡者達。
 だがそれ以上そんな事を悩んでいる暇は無かった。もう遅かったのだ。
 オバちゃんが消えた。
 化と思うとシャモジが超高速で三人の頚骨に叩き込まれる! ゴフッと肺の空気を吐き出して例外なくぶっ倒れる三人。
 セイルの怒りのパワーが色々なものを超越したようである。
 強ぇぇー。
 テーブルに突っ伏す三人をヒョイヒョイと片手で引き摺りながら出口へと歩を進めるセイル。

「お、お客様っ!?」

 唖然としていた店員は今更ながらその存在に気付いたようだ
 黒服サングラス戦隊登場なるか?。
 だがセイルはカウンターの前を通りかかったその時、ジャリッと重そうな小袋を置き捨てていく。

「お釣りはいりませんよ」

 さすが裕福。
 カッコいいぜ。

 カランカラン……、お店を出た時に聞えた鈴の音がサルサ、ステールッラ、アヤノの今夜の最後の記憶となった。
 何しろ、後は恐怖しか覚えていないのだから。
 気付けば朝まで『もう夜遊びはしません』と書き取り学習させられていたのだった。
 それ以前いったい何をしていたのだろうか?
 『あの夜の事を思い出そうとするとキリキリと頭が痛む……』……とは、ステールッラの弁である。


<数日後>


 『くじらごう』を付近の港に停泊させた一行は陸路を通って『LAD*UNA』に帰る為に街道を歩いていた。
 約三名以外意気揚々とした足取りだ。……まだあの恐怖は残っているらしい、ほんとにいったい何があったのか。
 行きはよいよい帰りは辛いとはよく言ったのもだが、満足のいく経験をしたのなら返って足は軽くなる。
 しつこいが約三名を除いた冒険者ではなく今は旅行者の者達は、足取りも軽くいつもの登り道の街道を歩いていく。
 歩きながら話す内容はやはり今回の旅行のことについてだ。
 話すたびに、走馬灯のように場面場面が思い出される。その一つ一つがいつか大切な思い出となることだろう。
 ただ今はまだお土産話でしかない。

 さあ、帰ったらみんなに語ろうか。この旅行の思い出を!
 









 一つ。
 重大な事を語り忘れていた。
 ウニである。
 ウニ。
 ウニッ。
 ウニィッ!
 そうそのウニの理由。
 何故、あそこまでサルサがウニに拘ったのかという理由を今お聞かせしよう!

 サルサがウニやら旅行やら言い出した朝の事。
 プチホテル『LAD*UNA』の階段の途中に待ち針が落ちていた。
 誰か裁縫をする人間が階段を通る途中で落としてしまったのだろう。よくある話だ。

ウニBALL(アヤノさん作)


製作者:アヤノさん





 ただその形が問題であった。


 茶色の、球状だったのだ。


 そう、その茶色のふわふわした綿のボールに待ち針やらを刺して使用する。いわゆるアレだ。

<ここから実況でお伝えします>

 アレに大量の待ち針が刺さっていた!
 命名『ウニBALL☆』
 そのキュートでどこかシックな物体がコロンと、コロリと片隅に寂しそうに転がっているではないか! ああご主人気付いてやれよ拾ってやれよ!
 しかしぃぃー世の中はぁぁ無情! その日は拾いに来なかったぁぁ!
 どこか影を背負って佇むウニBALLぅぅっ!(巻き舌)
 おおっとそこにサルサが寝ぼけ眼をこすって階段を降りてきた、きたっ、来たぁーー!
 千鳥足ですよ千鳥足っ! いい若いもんがっ!
 目をこすっているから足元が見えないっ! 両手で目をこすって階段降りるかフツー!?
 ~~(*´∇`*)。
 しかーし少なくともサルサは普通では、ないっ!(断言)
 寝ぼけたらやってしまうのだぁぁ!!
 ああっとぉぉ、その進行予定路線上にはウニBALLぅぅ(巻き舌)がぁぁぁっ!?
 ドスン。
 近づくサルサ、けれどその足元の小さなキュートな物体に気付かないっ!!
 ドスン。
 あああああああ、もうもうもう、この足を振り下ろしたらくるぅぅぅぅっ!!!

サクッ?

 …………。
 沈黙が、本当に一瞬の虚の沈黙が降り立った。
 人はこの瞬間を『無の状態』と呼ぶ。

「いっっっっっってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーっっっ!!??
 

 丁度。
 この直前サルサはウニをたらふく食す夢を見ていた。
 ウニさいこー、とか言いながら旨そうに食べる夢を見ていた。
 踏んだのだ!
 そんなウニの夢を見ている最中に、ウニBALLぅぅぅ(巻き舌)をっ!!

 憎しみと羨望はこの時、同時にサルサの胸中に巻き起こった。

「ぜってぇぇーーーウニを食べちゃるぅぅーーーっ!!」 

 って。
 ………本当にしょうもない動機なのだった。
 因みにウニBALLは洗って持ち主に返したのでご心配なく。




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偽冒険結果: ウニ。
       Complete!
偽心の重傷者:サルサ・ステールッラ・アヤノ
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